ユニクロを展開するファーストリテイリングが、今年の3月から年収を大幅に増額させるなど、人事制度を大きく改定することを発表した。
当社のHPおよび1月11日付日経新聞によると、ポイントは以下の通りである。
・目的は、「成長意欲と能力ある従業員一人ひとりにフェアに報い、企業としての世界水準での競争力と成長力を強化するため」
・職種・階層別に求められる能力や要件を定義し、各従業員に付与している「グレード」の報酬水準を数%~約40%アップ
・従来の役職手当などは取りやめ、それぞれの報酬は、基本給と各期の業績成果によって決まる賞与などによって構成
・一例としては、現行25万5千円である新入社員の初任給を30万円に(年収で約18%アップ)、入社1~2年目で就任する新人店長は月収29万円を39万円に(年収で約36%アップ)、その他の従業員も年収で数%~約40%の範囲でアップする予定
・報酬を決めるにあたっては、グローバル共通のグレードの基準を、仕事の実績・成果、組織に貢献する能力、成長意欲・成長性などの視点から改めて明確にすることでフェアなグレード評価を実現
・今回の報酬改定に先がけ、昨年9月に国内店舗の準社員(パート)・アルバイトの時給を改定済み(平均20%アップ)
・人件費総額で15%アップの見込み
固定的賃金を含めて人件費を一気に15%増やすというのは、通常はありえない思い切った決断である。狙いは人事制度の世界標準の構築だろう。当社の有報を見てみると、本社管理部門の賞与込みの平均給与は2022年度で959万円。小売業ではトップクラスといえるが、これでも海外の社員よりも低いとのこと。これを海外並みにしようということだ。
報酬以外にも、賃金体系の簡素化や世界共通グレードに基づく評価など、日本国内の社員を海外へ、また、海外の社員を日本へ、というように人材を流動化させやすい仕組みを構築している。
当社の国内業績は伸び悩んでいるものの、海外は好調である。すでに海外売上が国内を上回っているが、これをさらに加速していくためには、日本基準の人事制度では限界があるということなのだろう。
今年の春闘では、40年ぶりとも言われる物価上昇を背景に、5%・6%の賃上げを目指すと組合側は鼻息を荒くしているが、そのような数字が小さく見える異次元の賃金アップである。これほど強いインパクトであれば、今いる社員の満足度も高まるだろうし、あらためて優秀な人材の確保にもつながるはずだ。この点もやはりユニクロのしたたかさといえる。