人事評価において、公正な評価は最重要の課題である。公正な評価のために、経営者・人事部門は制度づくりに知恵を絞り、運用に力を注ぐ。だが、人を人が評価する以上、完全に公正な評価というのはあり得ない。
そこで重要となるのは、どれだけ部下の納得性を高められるかである。部下の方も、誰が評価をしても同じ判定となるような公正な評価は無理であることはわかっている。その中で、自分の納得のいく評価がなされれば、結果を受け入れられる。そして、評価に基づいて自己の課題を認識し、成長につなげられる。評価制度がうまく機能するということだ。
それではどのようにすれば納得性の高い評価ができるだろうか。これには大きく制度面の工夫と運用面の工夫があるが、ここでは運用面のポイント、中でも評価者が心がけるべきことを示したい。なぜなら、納得性を高めるために制度面にできることは限られており、運用時の評価者の関わり方が非常に大切となるからだ。
なお、運用の前提として、評価のフィードバック面談が求められる。もし、制度として取り入れられていないときは、上司が自主的にフィードバックの機会を設ける必要がある。
運用面のポイントは次の5つである。
①部下の仕事ぶりをよく観察する
部下から、「上司はしっかり見ているな」と思われれば、その評価への納得性は高まる。逆に、あまり見ていないと思われている上司であれば、評価の信頼性が不足するのは当然である。
②評価の根拠をはっきりさせる
なぜ、その評価となったのかが明らかであれば、納得性は高まる。「〇〇の行動がよく見られた」「あのとき、〇〇をしてほしかった」など具体的な行動や事実を示しながら説明をする。特に良い評価・悪い評価、長所・短所の指摘は、しっかりと根拠を示したい。もちろん、その根拠・評価に納得してもらえないこともあるだろうが、少なくとも、あいまいに済ますよりは納得性を高められる。
③部下の話を傾聴する
一方的な説明だけでは、納得性は深まりづらい。部下の考え方、見方にもしっかり耳を傾ける。その際、部下の話に異論があっても否定や反論はせず、なるほどそのような見方もあるかもしれないが、自分はこう考えるというように、互いの考え方を理解・共有する姿勢が大切である。
④自覚を促す質問(クエスチョン)をする
上司から見える部下の姿をどう思うか、部下の行動が周囲に与えた影響をどう考えるかなどを質問し、部下の自覚や気づきを促す。新たな視点を得られるようにすれば評価の納得性につながる。
⑤上司としての期待をはっきりさせる
今後、どのような行動、姿勢、成果を期待しているか、現状はどうなのかを評価制度を踏まえて伝える。期待に応えられたかどうかが次の評価の判断軸となる。当然ながら、上司はその内容をしっかりと覚えていなければならない。期待に沿う行動をしたのに、「そんなことは評価しない」となれば、評価の納得性は得られない。
①②は評価でのポイント、③④⑤はフィードバックでのポイントである。そして、⑤から再び①につながるサイクルでもある。
以上の(順番が入れ替わるが)観察、期待、質問(クエスチョン)、傾聴、根拠の5つを、評価の納得性を高めるための“カキクケコ”として、ぜひ意識してほしい。