2022/12/25

Z世代に仕事を任せない方がよい?

 最近、筆者が関わっている複数の企業で、2人の新入社員の退職があった。それだけなら特に珍しくはないのだが、2人とも退職代行サービスを使っての退職という点に特徴があった。

 退職代行とは社員に代わって退職手続きを進めるサービスで、上司や会社と直接的なコミュニケーションを取らずに済むのが社員側の大きなメリットとされる。一方、やめられた側は、昨日まで一緒に仕事をしていた部下・後輩が、見ず知らずの人からの電話1本で退職してしまうことに少なからずショックを受ける。「やめるにしても、せめて自分の口から言ってくれよ」と思うわけである。

 特にそのうちの1社は、近年新入社員の離職はなく、定着管理にそれなりの「自信」を持っており、当の社員も仕事ができないわけでなく、むしろ優秀でやる気も見られたのことで、ショックを通り越し、呆然としたという。

 前置きが長くなったが、退職した2人は、1990年代後半から2010年生まれのいわゆるZ世代に該当する。

 Z世代の若手社員の特徴に挙げられるのが強い自己成長願望で、仕事を通じて自分が成長できるかに大きな関心を持つとされる。したがって、成長を感じられなければ、その会社にいとも簡単に見切りをつけてしまうという。

 もちろん、多くの経営者や上司もそういったことは知っているので、仕事を通じて成長できるよう、その機会を与えることに腐心する。その典型例が、早くからできるだけ大きな仕事、責任ある仕事を任せることだ。

 これまで、入社3年目くらいまでは補助的・補完的な仕事をさせ、地道に修行を積ませたうえで初めて責任ある仕事を任せるのが一般的だった。近年はそれだと、我慢をしてもらえないので、入社後すぐにでも仕事を任せるのがよいという認識に変わってきている。石の上にも3年ではなく、石の上にも3か月、場合によっては3週間なのだ。

 手間暇をかけて採用した新入社員を辞めさせないためにも、早めに仕事を任せようというわけだが、どうも逆にこれが新入社員の負担となっている可能性がある。

 日本能率協会が12月16日に公表した「イマドキ新入社員の仕事に対する意識調査2022」では、新入社員の6割が自身に仕事を任された際は「失敗したくないので、責任ある大きな仕事は任されたくない」と思っており、「やりがいを得るために、責任ある大きな仕事を任されたい」は4割だったということだ。しかも、この3年間、「任されたくない」の割合が大きくなっている。

 また、自身の成長について、「無理のない範囲で業務に取り組みたい」が半数以上で、「一時的に業務の負荷や労働時間が増えても挑戦したい」を上回っている。

 失敗をしたくない、無理もしたくない、というのは、良くも悪くも目立つことを嫌い、競争よりも協調を好むZ世代と特徴が現れているといえるかもしれない。

 難しいのは、だからと言って、Z世代新入社員を一派ひとからげにして無理をさせないのも問題ということだ。4割は責任ある仕事を任せてほしいと望んでおり、そのような人たちにとっては不満が募ることになる。

 同様のことが労働時間にもいえる。基本的に新入社員に長時間労働をさせないのはよいとしても、中には残業をしてでも仕事を覚えたいと思う者もいる。特別扱いをする必要はないが、少なくともその気持ちは理解をする必要はある。そのような社員には、ときにハードに残業をさせることも必要ではないだろうか。

 基本は個性にあったマネジメントが求められるということだ。まあ、これはZ世代に限らず、これからの人事管理において、すべての世代に必要な考え方であるが。    

 


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