2022/10/9

再び人手不足に

 コロナ騒動が収まりつつある現在、中小企業で再び人手不足が深刻化してきている。

 日本商工会議所と東京商工会議所が中小企業を対象に実施した「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況」の結果を見ると、「人手が不足している」と回答した企業割合は64.9%で、前回調査(2022年2月)と比べて4.2ポイント増加し、過去最高水準(2019年調査の66.4%)に迫っているとのことだ。ちなみに、コロナ禍での底と考えられる2020年7~8月調査では、「不足している」は36.4%だったので、約30ポイントの劇的な増加である。

 業種別では、「建設業」(77.6%)、「運輸業」(76.6%)、「介護・看護業」(74.5%)、「宿泊・飲食業」(73.9%)の不足が顕著である。

 このうち、コロナによる深刻な影響を受けた「宿泊・飲食業」と「運輸業」は、2020年7~8月調査では、それぞれ32.4%、41.4%だったので、”人余り”から”人手不足”への急速な変化が見て取れる。

 調査では、このような状況にどう対応するかを質問している。「不足している」と回答した企業の対応方法として挙げられたのは、「正社員の採用」(83.8%)が断トツで多く、次に「有期雇用社員の採用」(48.1%)である。有期社員よりも正社員を求めるのは、今後も人手不足は続くので、安定した人材が欲しいとの考えからだろうか。

 以下、「業務プロセスの見直しによる業務効率化」(38.7%)、「社員の能力開発による生産性向上」(32.4%)、「IT化等設備投資による生産性向上」(29.8%)と続く。
業務の効率化といった迂遠な手法よりも、とにかく頭数を増やすという即効性のある手段を望んでいることがわかる。

 求人競争が激化する中、よりよい人材を確保するには自社のメリットをアピールしなければならない。求職者に対して魅力ある企業・職場となるための取組としては、「賃上げの実施、募集賃金の引上げ」(57.0%)が最も多く、次いで「福利厚生の充実」(45.9%)と、待遇の改善による取組が目立つ。以下、「人材育成・研修制度の充実」(41.1%)、「オフィス・工場等、職場の環境整備」(35.9%)、「ワークライフバランスの推進」(28.1%)と、育成環境や職場環境の整備は二の次となっており、ここでも即効性が重視されているのがわかる。

 まずは人手の確保が大事なのも理解できるが、大切なのは、人手を確保した後のことである。効率的に業務を進められる環境や育成環境、働きやすい職場環境等の整備がなされていなければ、苦労して確保した人材も居つかない。辞めたのならまた雇えばよい、というのでは、いつまで経っても状況は変わらない。本質的な部分で組織・業務の改善をしなければ、永遠に人手不足に振り回されることになるだろう。

 業務効率化や育成環境や職場環境の整備など、零細企業には無理との声もあるかもしれないが、何も新たなシステムや制度の導入が必要というわけではない。まずは従業員とのコミュニケーション機会を増やすなどでもよい。企業の体力にあったやり方でOKなのである。       

 


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