2022/7/2

パワハラによる労災支給が増えている

 厚生労働省が6月24日に公表した2021年度「過労死等の労災補償状況」によれば、精神障害に関する支給決定件数(629件)のうち、パワーハラスメントに起因するものが最も多かった。

 詳細を見ると、上位5つは以下の通りである。

「上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」125件
「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」71件
「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」66件
「特別な出来事(心理的負荷が極度のもの)」63件
「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」61件

 トップが上司等からのパワハラであり、5番目は同僚等からのパワハラといえるだろう。2つを合わせれば、全体の3割を占めることになる。

 なお、決定件数の上位は以下の通りだ(決定件数とは当該年度内に業務上又は業務外の決定を行った件数のこと。審査対象数と考えればよい)。

「上司とのトラブルがあった」451件
「上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」242件
「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」183件
「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」126件
「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」100件

 全体の認定率(支給決定件数÷決定件数)は32.2%である。これに対し、上司等からのパワハラの認定率は51.7%、同僚等からのパワハラは48.4%と高めである。パワハラに起因する精神障害は、労災認定を受けやすい傾向にあることがわかる。

 もう1つ特徴的なのは、パワハラに起因するもの自体が増えていることである。
この5年間の支給決定件数の推移を見ると以下のようになっている。参考までにセクハラに起因するものおよび全体の件数も示した。

 2017年度2018年度2019年度2020年度2021年度
パワハラ※88件69件79件170件186件
セクハラ35件33件42件44件60件
全体506件465件509件608件
629件
※なお、2019年度までパワハラに該当するのは「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の1項目のみ。

 項目が変わったこともあるが、2020年度以降、大きく増えていることがわかる。その要因としては、①パワハラそのものが増えていること、②労災への意識が高くなり請求が増えていること、が考えられる。

 ある企業の担当者から聞いたが、近年、セクハラに対する理解・防止意識が浸透してきており、職場でのセクハラ行為は減少しているとのことだ。これが一般的な事実であれば、上記の支給決定件数の推移でセクハラが増えているのは、②の要因が大きいといえそうだ。一方、パワハラに関しては、①②のいずれの要因もあるため、セクハラに比べて大幅な増加を示しているという推論も成り立つ。

 今後、パワハラに対する防止意識が高まれば、①の要因が減少し、件数の伸びも鈍くなってくる可能性がある。2020年度から2021年度の増加率は前年に比べて低いので、すでにその兆候はあるのかもしれない。希望的観測に過ぎないが、来年の調査では増加率がさらに低くなることを願う。            

 


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