2022/4/18

企業が設定している評価項目

評価項目

 一般に人事評価の項目としては、業績・能力・態度などが知られるが、実際に企業はどのような項目を設定しているのだろうか。株式会社パーソル総合研究所が実施した2021年「人事評価制度と目標管理の実態調査」によれば以下の通りである。

・成果の達成度(業績・売上・納期などの達成度合いの評価)(80.9%)
・行動・プロセス(行動評価)(70.8%)
・勤務態度・業務への取り組み姿勢・情意(態度評価)(65.0%)
・保有能力・スキル(能力評価)(51.8%)
・コンピテンシー(行動特性・発揮能力の評価)(44.4%)
・企業理念・ビジョンの体現(理念浸透の度合いの評価)(28.3%)
・その他(3.5%)

 業績評価の採用率が最も高いのは当然として、2番目は行動評価であり、能力評価は態度評価に次ぐ4番目となっている点に着目したい。おそらく30年前であれば能力評価は1番目か2番目に入っていたのではないかと思う。かつては保有能力が重視されたが、成果・業績主義の普及に伴い、それら”結果”により近い発揮能力や行動が重視されるようになったことが如実に示されている。

 ところで評価というのは、業績面と行動・能力面とに分けられるのが一般的である。上記結果のうち、行動・能力面、つまり「業績評価」と「その他」以外を合計すると260.3%となる。

 単純に考えると、業績以外に2.6個の項目を設定していることになり、3項目を採用している企業もあるということだ。考えられるとすれば、行動評価(あるいは能力評価)、態度評価、企業理念・ビジョン評価という組み合わせだろうか。

 コンピテンシー評価は、行動評価や能力評価、態度評価を含むものであり、それらとの並立は難しいと考えられる。もっとも定義の仕方にもよるし、管理職と一般社員とで異なる評価項目を設定することもあるので、これ以外のパターンもあり得るが。

 調査は、企業規模別(100~1,000人未満、1,000~5,000人未満、5,000人以上)の結果も示している。これを見ると、全般に規模が大きいほど採用率が高くなる傾向があるが、特にコンピテンシー(38.6%、48.5%、57.8%)や企業理念・ビジョンの体現(26.7%、24.6%、37.0%)は、5,000人以上で高い傾向がある(カッコ内の数字は規模ごとのもの)。

 コンピテンシーは設計に専門性が必要となり、手間もかかるので、規模が大きいほど対応はしやすくなるだろう。企業理念・ビジョンの評価は、「クレド評価」などと称して、10年ほど前から外資系の企業を中心に普及が始まったもので、近年、取り入れる企業が増えている。大企業のほうがそういった先進事例に敏感なことや、規模の大きさゆえにコアとなる理念が重要となること、企業理念・ビジョンが行動指針として具体的に設定されており評価との親和性があることなどから、採用率が高いと思われる。

 もっとも、企業理念・ビジョン評価は、独自分野で強みを発揮していく中小企業にも必要性は高いはずだ。筆者も中小企業の評価制度設計時には推奨している。トップの思いを浸透させるツールとして、ぜひ採用を考えてほしいものである。            

 


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