2022/3/6

カスハラへの対応

カスハラ

 2022年4月から全面施行されるパワハラ防止法(労働施策総合推進法)では、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)により、労働者が就業環境を害されることのないよう、企業は雇用管理上の配慮をすることが望ましいとしている。

 カスタマーハラスメントとはどういうものか、企業はどのような対応をすべきか、厚生労働省が先月公表した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に基づき概観してみよう。

 まず、カスハラとは何かだが、法的な定義は定まっていないものの、マニュアルでは以下のように定義づけている。

「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」

 ポイントは、「クレーム・言動の要求の内容の妥当性」と「手段・態様が社会通念上不相当か」である。

 このうち、要求の内容の妥当性を欠く例として、以下の2つを挙げている。
①企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失認められない場合
②要求の内容が、企業の提供する商品・サービスの内容とは関係がない場合

 また、手段・態様が社会通念上不相当なものの例としては、「要求内容の妥当性にかかわらず不相当とされる可能性が高いもの」として、以下の9つを示している。
①身体的な攻撃(暴行、傷害)
②精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
③威圧的な言動
④土下座の要求
⑤継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動
⑥拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
⑦差別的な言動
⑧性的な言動
⑨従業員個人への攻撃、要求

 さらに、「要求内容の妥当性に照らして不相当とされる場合があるもの」として、以下の3つを示している。
①商品交換の要求
②金銭補償の要求
③謝罪の要求(土下座を除く)

 たとえば、商品に不備があった場合は、商品交換は認められるが、不備があることを理由に威圧的な言動をしたり、執拗に責めたりするのは、カスハラに該当する可能性が高いということだ。

 「お客様は神様」信仰が根強い日本では、1つ非があると、客の要望を何でも受け入れざるをえないとするような風潮があるが、そうではないことをあらためて示したのは意義深いと思う。

 マニュアルでは、カスハラ行為を時間拘束型、リピート型、暴言型、暴力型、威嚇・脅迫型、権威型、店舗外拘束型、SNS/インターネット上での誹謗中傷型、セクシャルハラスメント型の9つに類型化し、それぞれ対応例を示している。

 詳細はマニュアルを確認していただければと思うが、基本は、カスハラに該当しそうと感じたら、無理に個人で抱えず、上司や同僚などを呼んで複数で対応することだと思う。特に暴言型や暴力型、威嚇・脅迫型などは、多人数での対応が効果的ではないだろうか。

 消費者に直接接する販売業や飲食・サービス業などでは、誰しもカスハラもしくはそれに近い行為を受けた経験があるだろう。従事者でなくても、客としてそのような場面に遭遇したことはあるはずだ。クレームを受ける担当者のメンタルを考えれば、被害は重大である。企業には、パワハラやセクハラと同じレベルでカスハラにも対応してほしいものだ。            

 


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