厚生労働省の令和2年転職者実態調査について、今回は労働者側の回答を確認してみよう。
まず、賃金の変化は、「増加した」39.0%、「変わらない」20.2%、「減少した」40.1%となっている。
20歳から64歳までの年齢階級別の「増加した-減少した」D.I.を見ると、最大は30~34歳の15.8ポイント、最小は60~64歳の-46.6ポイントである。20歳から49歳まではプラスの値、50歳以上はマイナスの値となっており、50歳以上は賃金増加の可能性は低くなると言えそうである。
次に離職理由を見ると、自己都合が76.6%と大半を占めるが、興味深いのは、「倒産・整理解雇・人員整理による勧奨退職」が5.8%と「定年」の3.0%を上回っていることだ。本調査が転職者を対象にしていることや、定年退職は対象が60歳以上に限られること、コロナによる事業悪化の影響などが要因と考えられるが、それにしても定年退職者のほうが少ないのはやや驚きである。
自己都合の離職理由(3つまで回答)として上位に挙げられたのは次の通りだ。
①労働条件(賃金以外)がよくなかったから(28.2%)
②満足のいく仕事内容でなかったから(26.0%)
③賃金が低かったから(23.8%)
④会社の将来に不安を感じたから(23.3%)
⑤人間関係がうまくいかなかったから(23.0%)
このうち「⑤人間関係」は20~24歳が38.4%と突出している。学生から社会人となり、人間関係の壁にぶつかっていることがうかがえる。
転職の方法の上位は、「求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等」39.4%、「ハローワーク等の公的機関」34.3%、「縁故(知人、友人等)」26.8%となっている。「求人サイト」は若年ほど利用率が高く、「ハローワーク」は年齢に関係なく利用されている。「縁故」は30歳以上での活用が目立つ。
現在の勤め先を選んだ理由(3つまで回答)の上位は次の通りとなっている。
①仕事の内容・職種に満足がいくから(41.0%)
②自分の技能・能力を活かせるから(36.0%)
③労働条件(賃金以外)がよいから(26.0%)
概ね、上記の離職理由と対応している。ただ、離職理由の3番目だった賃金は上位3つに入っておらず、「賃金が高いから」は、「転勤が少ない、通勤が便利だから」20.8%に続いての5番目15.1%となっている。賃金は”辞める理由”になるが”入る理由”にはならないということか。
最後に、現在の勤め先での「職業生活全体」の満足度は、「満足」53.4%、「どちらでもない」34.5%、「不満足」11.4%となっており、「満足-不満足」D.I.は42.0ポイントと「転職してよかった」と思う人はかなり多いようだ。
項目ごとに見ても、総じてD.I.は高いのだが、「賃金」に関しては、「満足」46.6%、「不満足27.1%」で、「満足-不満足」D.I.は19.5ポイントと他と比べて低い。賃金よりも仕事内容の方が、仕事の満足度に影響していることがうかがえる。