評価制度が企業に与える影響は大きい。評価は社員の給与・ボーナスの決定し、昇進・昇格の要素となる。社員にとってみれば、会社生活を大きく左右する要因となる。それゆえ、社員はよい評価を得られるよう行動するので、会社全体のパフォーマンスを決定づける。
こういった影響を考えると、評価制度、その中でも評価項目はよく吟味されたものでなければならないはずだ。ところが、いろいろな企業の評価項目を見てみると、いい加減とまでは言わないものの、「もっと改善の余地があるのに」と思うことが多い。以下、能力・態度・行動面の評価を中心に、どういった問題点があるかを具体的に指摘したい。
(1)重要な要素に漏れがある
たとえば、能力・行動面では「計画的に仕事を進める」、「改善活動をする」、「人材育成をする」、態度面では、「チャレンジをする」、「あきらめずにやり抜く」など、成果を出すための基本的に要素に漏れがある。もちろん、これらすべてを備えている必要はないが、もし、会社で重要と考えているにもかかわらず、漏れがあるのなら、重大な欠陥と言わざるをえない。
(2)階層とのレベル感が合っていない
典型的なのは管理職クラスに規律性や責任性を求める、逆に一般社員クラスにリーダーシップや指導育成力を求めるなどだ。全社員が同じ評価項目となっている場合に起きがちである。不要とは言わないが、階層に応じたもっと重要なものを設定すべきである。
(3)評価項目にダブりがある
チャレンジという項目がありながら、別の項目で「○○に積極的に取り組む」などを設定するケースである。評価者は、どちらを選択してよいか迷ってしまう。完全にダブらないようにするのは難しいだろうが、どちらを適用してよいか、明らかに迷うようなものは見直すべきだ。
(4)定義・着眼点に偏りがある
たとえば、問題解決力は、①問題に気づく、②原因を究明する、③解決策を立案する、というステップからなる。あるいは、①情報収集、②問題分析、③解決策提示、というステップでもよい。定義・着眼点を示すのなら、その3点から示すというような体系性がほしい。これが1つの視点に偏っていては、問題解決力の一部しか評価されないこととなり、社員の能力向上にならないし、引いては会社のパフォーマンス向上にもつながらない。
(5)項目と定義・着眼点が合っていない
たとえば、交渉力といいながら内容は調整力になっているなどのケースをたまに見かける。項目の名称を変えれば、すっきりするのにと思うことがある。
これらの問題があると、社員・会社のパフォーマンスに悪影響を及ぼすとともに、評価エラーが起きやすくなり、被評価者の納得性を低下させてしまう。評価の納得性を高めるという観点からも、自社の評価項目について、上記5点からあらためて見直していただきたい。