新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに採用活動も大きく変容した。その1つがオンラインによる採用である。その現状について、人材サービスのディスコ社が実施した「2022 年卒・新卒採用に関する企業調査-内定動向調査」を見てみよう。
まず、オンラインによる採用活動の実施状況は以下の通りである。
・WEBセミナー 86.5%(前年同期調査68.6%以下同じ)
・自己PR動画 9.5%(8.2%)
・動画面接(録画タイプのもの)3.6%(3.1%)
・WEB面接 81.0%(73.4%)
WEBによるセミナーや面接は8割を超え、もはや“常識”となっていることがわかる。ただ、自己PR動画や動画面接はまだ少数派である。
オンライン採用活動のメリットとしては、
・感染症の予防 73.5%
・遠方学生の応募が増えた 72.0%
・日程調整がしやすい 65.0%
・コストの削減 62.8%
・母集団を形成しやすい(応募が増えた) 57.4%
が上位に挙げられている。要は対面方式に比べて、場所や時間の融通性が高まり、応募者の増加が期待できるということだ。もっとも、オンラインならではのデメリットも発生している。オンライン採用活動のデメリットとしては、
・学生の志望度の見極めが難しい 71.5%
・学生の志望度を高めるのが難しい 65.6%
・学生の企業理解を深めるのが難しい 61.7%
・学生の評価が難しい 55.7%
・採用重点層へのアプローチが難しい 29.5%
が上位となっている。画面越しに会話をすること難しさ、もどかしさが大きく反映されている。オンライン会談は、見知った人との間でもやりづらいものだが、初対面となる採用の場では、一層困難さが増すことは容易に想像できる。この辺は、慣れの問題であり、今後、次第に解消していく可能性はあるが、対面とのギャップが完全になくなることはないだろう。
また、学生からすれば、従来よりも容易に参加できるため、「お試し」や経験・トレーニング目的の参加も増えるに違いない。フィルターの密度が大きくなり、玉石混交の度合いがより高まるということだ。中には、経験を積んだ”WEB面談巧者”が、最終面談に残ったり、内定を勝ち取ったりすることになるかもしれない。実際、WEB面談で高評価だった学生が、対面だと低評価となるケースもあるという(もちろん、その逆も)。
コロナ収束の有無にかかわらず、オンライン採用活動は恒常化するだろう。これまで企業は、面談で高評価だった学生が、採用してみると期待はずれだったというケースが少なからずあった。今後は、そのような事態がさらに増えるかもしれない。一方で、WEB面談とリアル面談の双方により、人材見極めの精度を高められるようになるのかもしれない。オンライン採用活動は、当面の間、手探り状態が続くと考えられる。