3回にわたって労働政策研究・研修機構(JIL)の「管理職の働き方に関する調査」からテーマを設けて述べてきたが、今回は「管理職の給与等の優遇措置」である。
近年、管理職になりたくない社員が増えているとの指摘があり、筆者も日常的に実感している。理由としては、「上司と部下の板挟みにあって大変」「上から厳しく成果を求められる」「残業代が出なくなり、給与が下がる」などさまざまだが、要は「苦労のわりに報われない」ということだろう。
いっそのこと管理職を無くして今流行のティール組織にする、という選択もあるが、多くの企業にとっては現実的でない。やはり、大半の企業は組織を回していくには管理職が必要である。
ということで、企業は管理職を魅力あるものにしなければならない。そのために、まず基本となるのは報酬面でのメリットである。
JILの調査では、一般社員と比べた管理職の給与等における優遇措置等の状況は次の通りとなっている。
・役職・役付手当の支給がある(87.2%)
・基本給の額が高い賃金表が適用される(61.4%)
・賞与の支給率が高い(40.5%)
・賞与の基礎賃金が優遇されている(45.2%)
※数値は課長クラス
このようにまずは役職に対する手当、次に基本給を高くすることが優遇策の王道となっている。これら2つは同時に行っているケースが多いと思うが、役職手当を支給せずに、その分を基本給に組み込むような仕組みもあるだろう。
ところで、こういった優遇措置にもかかわらず、「1年間に支払われた賃金の総額が、一般社員の同額程度以下になる」ケースが支社長等クラスで7.2%あるという(課長クラスは17.0%)。
調査では、「その理由は業績給や成果給によるものである」とする割合を調べており、支社長等クラスで64.2%となっている。いくら業績に対する責任は重いといえ、支社長等で一般社員よりも報酬が少なければ”やってられない”のもうなずける。もちろん、業績を上げれば、一般社員には得られない高額の報酬が期待できるとは思うが、簡単なことではないはず。そのような会社であれば、一般社員が管理職になりたくないと考えるのも当然だろう。
管理職を報酬面で優遇するには、管理職の報酬を引上げるか、一般社員の報酬を引下げるかになる。後者は、少なくとも給与面においては、残業削減に取り組んで残業代を減らすくらいしかできないので、基本的には管理職の報酬引上げが求められる。
まずは管理職手当の増額などが考えられるが、固定的な人件費の増加は避けたい企業も多いはずだ。となると、賞与の仕組みを管理職が有利となるように変えるなどの方法が選ばれるだろう。先に見たように、現状は給与面での優遇が多いが、今後は賞与面での優遇が増えるのではないかと思う。