2021/6/6

人材育成課題を考えるときの視点

人材育成
 
 いつの時代にも企業にとって人材育成は最重要の経営課題である。特に近年は人手不足により優秀な人材を外部から確保することが難しくなってきており、今いる人材を育てることの必要性が高まっている。
 
 具体的な施策として、人材育成体系の策定やキャリアパスの整備などが求められる。このとき、大切なのは、まず自社の人材育成上の課題は何かを明確にすることである。課題が不明確のまま取り組んでも、あたりさわりのない総花的な制度しかできず、効果が出る可能性は低い。

 人材育成課題を考えるとき、思いつくままに列挙しても、テーマの重複や漏れが出たりして、納得性・妥当性に欠ける恐れがある。また、「○○研修は役に立たなかった」など個別的な事象にとらわれ、小手先の改革にとどまる可能性もある。それを防ぐためには体系性のある視点を持つ必要がある。例として次の4つの視点を示したい。

(1)経営環境の変化から見た課題
(2)経営方針やビジョンから見た課題
(3)人事や組織から見た課題
(4)現在の人材育成制度から見た課題

 以下、簡単に説明しよう。

(1)経営環境の変化から見た課題

 当たり前だが、経営環境の変化に伴い、求められる人材も変わってくる。そのために、以下の事項をチェックする必要がある。
①変化はどのようなものか?(人口減少、デジタル化の急進展、コロナ後の社会など)
②変化にどのように対応しようとしているのか?
③そのためにどのような人材が必要か?

(2)経営方針やビジョン・経営計画から見た課題

 会社の目的は経営方針の実現であり、そのためにはビジョンや経営計画を達成していかなければならない。いうまでもなく達成を担うのは社員である。したがって、経営方針やビジョン・経営計画達成の視点から人材面の課題を検討する必要がある。経営方針だけだと少し漠然としているので、経営方針だけでなく、10年後のビジョンや5年から3年といったある程度のスパンを持つ経営計画からも考えるのが適切だろう。

(3)人事や組織から見た課題

 人事や組織面は次の2つの視点から課題を導き出せる。

①会社全体
 たとえば、人事異動が少ないことに対し、「多様な業務経験を積む場が必要」といった課題や、上司により部下育成スキルにバラツキがあることに対し、「部下育成スキルの標準化」といった課題が考えられる。

②階層別
 たとえば、課長クラスに経営を担う人材が不足していることに対し、「会社全体を俯瞰できる視点・知識の養成」といった課題や、若手社員が日々の業務に追われ偏ったスキルしか習得できていないことに対し、「必要スキルの整理と計画的な人材育成」といった課題を提示できる。

(4)現在の人材育成制度から見た課題

 最後に現状の制度面の課題である。まずは現制度が抱える問題点を整理した上で、その解決のための課題を考えることになる。 たとえば、研修効果がはっきりしないことに対して、「研修のフォローおよび検証が必要」といった課題や、OJTが管理者任せになっていることに対して、「OJTマニュアルの作成による管理者の育成レベル確保」を課題とするなどである。

 (1)~(4)は、マクロ的な視点からミクロ的な視点に並んでいる。(1)だけだと抽象的で実現性の低いものとなり、逆に(4)だけだとその場しのぎのものとなる恐れがあり、いずれにしても実効性は期待できない。(1)~(4)の視点から、バランスのとれた課題設定を検討していただきたい。      
 

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