2021/4/25

厚労省の履歴書様式例

履歴書
 
 今月16日、厚生労働省が履歴書のサンプル(様式例)を公開した。昨年、日本規格協会がJIS規格として公開していたものを取りやめたことから、あらためて国として様式例を示したものだ。
 
 日本規格協会が公開をやめたのは、履歴書から性別欄の削除を求めるNPO等の要請を受けてのことだ。厚労省が示した様式例もその流れを汲んでおり、記載事項は、

・顔写真
・氏名
・生年月日
・性別(※任意記載)
・現住所・連絡先
・学歴・職歴
・志望の動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど
・本人希望記入欄

 と非常にシンプルな構成となっている。

 JIS規格のものとの違いは以下の点である。

①性別欄は男・女の選択ではなく任意記載で、未記載とすることも可能。
②「通勤時間」「扶養家族数(配偶者を除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」欄は削除。

 ①はLGBTへの配慮や、性別による差別解消を意識したものと考えられる。②は、本来、選考に関係のないプライベート事項ということだろう。

 従来の履歴書は、応募者の職務適性をみるというよりは、その会社のメンバーとしてやっていけるかどうか、全人格的を把握するという要素が強かった。そのため、“人となり”を知るのに有効とされる「趣味」「性格」などを記載させるものもあった。また、家族の状況など、仕事以外の情報も得ようとした。最近流行の言葉で言えば、「メンバーシップ型」の履歴書である。

 もっとも、このメンバーシップ型履歴書はいまだに主流である。配偶者の有無は当然のように気になるし、中には「女性は独身で自宅通勤でなければダメ」と考える昭和の経営者もいる。そういった企業にとって、厚労省の「ジョブ型」履歴書は物足りないものとなりそうだ。逆にこの様式でOKという企業であれば、多様性やプライベートを尊重する企業といえるかもしれない。働きやすい会社であることの1つの目安となるだろう。

 ところで、このように進歩的な様式例だが、「顔写真」は存続した。最近、ユニリーバ・ジャパン、三菱ケミカルなど顔写真を不要とする企業も出てきたが、さすがにそこまでは踏み込めなかったようだ。

 ユニリーバ社が顔写真の排除を決めたのは、「社会で無意識に生じる性別や容姿への先入観を取り払うため」とのことで、顔写真がさまざまなアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや偏見)を生み出すことを指摘している。履歴書を見たとき、最初に目が行くのは顔写真ではないかと思う。それくらい顔というのは関心を引きつけるが、タレントの発掘ではないのだから、ほとんどの場合、仕事と顔は無関係のはずだ。

 次回、厚労省が様式例を更新する際は顔写真の欄をなくし、「履歴書には顔写真が必須」というアンコンシャス・バイアスを払拭してくれないかと期待している。      
 

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