2021/3/7

70歳就業機会確保措置の業務委託の頻度

 70歳までの就業機会確保を努力義務とする改正高年齢者雇用安定法が4月1日施行される。

 就業機会確保措置は、「定年年齢の引上げ」等の5つの選択肢から選ぶことになるが、その1つに「継続的に業務委託契約を締結する制度の導入」がある。社員ではなく、いわばフリーランサーとして働いてもらうという選択である。コロナ禍でリモートワークが普及するなか、労使双方に結構なニーズがあるのでは、と思っている。

 業務委託を検討する際、もっとも気になるのは、どの程度の仕事量を依頼するか、あるいはどのように仕事量を定めるかという「委託の頻度」の問題だろう。企業にとっては支払金額、労働者にとっては収入に直結するからだ。企業は業務の繁閑や労働者の能力に応じて柔軟に発注したい一方で、労働者は安定的な受注を望むはずだ。

 今般の70歳就業機会確保措置で業務委託制度を導入するには、「創業支援等措置の実施に関する計画」を作成し、過半数労働組合等の同意を得なければならない。計画の記載事項として12項目が定められており、その中に「④契約を締結する頻度に関する事項」がある。

 どのような内容にすればよいか、厚生労働省の「創業支援等措置の実施に関する計画の記載例等について」というパンフレットの記載例を見てみよう。

【記載例】
 甲は、○○○○に関する業務を一年あたり○回から△回、△△△△に関する業務を一年あたり○回から△回の範囲で準備し、本制度を利用して就業する高年齢者全体の人数や乙の個々の資質・能力・健康状況等に鑑みて、乙に対して適切な頻度で本件業務を分配し発注する。なお、甲の経営状況や取引先との関係等によって上記準備範囲に増減が生じた場合には、増減後の準備範囲を前提に、甲乙間で誠実に協議した上で、乙に対して適切な頻度で本件業務を分配し発注することとする。

 記載にあたっては、「本制度を利用して就業する高年齢者全体に対して企業として発注を行う頻度の総量を定めるほか、個々の高年齢者に対して個別の発注を行う頻度を定めることもでき」、その場合は、「個々の高年齢者との間で締結する基本契約において、予定される個別の発注を行う頻度の範囲を盛り込み、個々の高年齢者に対して示すことが望ましい」としている。

 また、留意点として、

・頻度に具体的な基準はないが、個々の高年齢者の希望を踏まえつつ、個々の業務の内容・難易度や業務量等を考慮し、できるだけ過大又は過小にならないよう適切な業務量や頻度による契約を締結する必要がある。
・やむをえない事情等により、本計画で定めた頻度の範囲を大きく逸脱する場合は、制度の対象となる高年齢者の理解を適切に得るように努める。
・必要に応じて実態に沿った頻度となるように計画の見直しを行う。

 と示している。ただ、これだけでは抽象的であまりピンと来ない。厚労省の別の資料「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者就業確保措置関係)」を見ると、次のQAがある。

 ⑳継続的な業務委託とは、どの程度の頻度・分量を目安とすればよいですか。例えば月数回程度、年数回程度など、定期的に業務を委託する計画内容・契約内容であり、労使間の合意があれば認められますか。

⇒ 業務委託契約等の頻度については、創業支援等措置の実施に関する計画に記載し、当該計画について労使合意を得る必要がありますが、業務委託等の頻度は労使間で十分に協議の上で、労使双方とも納得の上で定められたものであれば差しつかえありません。具体的な規定の方法としては、例えば創業支援等措置を利用して就業する高年齢者全体に対して企業として発注を行う頻度の総量を定めるほか、個々の高年齢者に対して個別の発注を行う頻度を定める方法が考えられます。また、個々の高年齢者との契約に際しては、その希望を踏まえつつ、個々の業務内容・難易度や業務量等を考慮し、できるだけ過大又は過小にならないよう留意した上で、計画で定められた頻度から妥当な範囲で個々の高年齢者との契約の頻度が定められたものであれば差しつかえありません。(下線は筆者)

 内容としてはパンフレットとほぼ同じだが、パンフにない文言として、下線部分に注目してほしい。この見解によれば、企業は細かな規制に縛られることなく、柔軟な対応ができそうである。もちろん、企業が一方的に都合のよいルールを作ってよいというわけではなく、あくまで労使間の話し合いの下でということだ。

 社員への業務委託という形態は、70歳就業機会確保措置としてだけでなく、今後有望な働き方の1つとなるだろう。この機会に独立心旺盛な高齢労働者と業務委託契約をしてみて、ノウハウを蓄積するというのも有効な選択だと思う。      
 

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