2021/2/28

配偶者手当の廃止

 
 「配偶者手当」は、社員に配偶者がいる場合に支給する手当で、生活扶助手当の代表的なものだ。一般には配偶者も含めた「家族手当」と称する場合が多い。

 支給要件となる配偶者は夫でも妻でもかまわないが、大半は妻というのが実態だろう。元々は専業主婦が当たり前であった時代のもので、共働きが当たり前となった現代にマッチしたものとはいえない。さらには、別の支給要件として103万円といった収入制限を設ける企業が大半のため、女性の社会進出を妨げているとの批判もあり、手当の妥当性・必要性が議論となっているところである。

 厚生労働省では、2015年12月に「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会」という審議会を設置し、2016年4月に報告書を出している。このほど、その改訂版となる「配偶者手当の在り方の検討に向けて」という資料が公表された。

 いわば国が認めた「配偶者手当廃止のススメ」である。見直しをする際のポイントを資料にしたがって確認してみよう。

 資料で見直しの留意点として挙げているのは次の5つである。

(1)ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組
(2)労使の丁寧な話合い・合意
(3)賃金原資総額の維持
(4)必要な経過措置
(5)決定後の新制度についての丁寧な説明
 
 (1)は、会社が直接行う方法や、労働組合を通じて行う方法のそれぞれ具体例を示している。また、設計に従業員を参画させることで納得を高められるとしている。

 (2)では、労働契約法第10条の観点(労使間の合意が就業規則の変更に係る合理性判断に際しての重要な考慮要素となる点)からも重要と指摘している。

 (3)は、賃金原資総額の維持を原則に様々な変更内容を、①配偶者手当の廃止、②縮小、③存続の3つに類型化し、その具体例を示している。手当見直しにあたって最も参考となる箇所である。

 (4)は、手当廃止等の場合の経過措置について企業の具体例を示したもので、これも参考になるだろう。たとえば、期間としては2~3年が多いとのことだ。

 (5)は、社員への説明方法として、説明会によるもの、説明会以外の方法の2つにつき具体例を挙げている。

 以上、内容的には極めてオーソドックスなものだが、それだけに手堅い手法ともいえる。配偶者手当(家族手当)をなくしたいという企業のニーズは高いが、一方で、社員の収入に直接的にかかわってくるため抵抗感も強く、および腰になる企業も多い。そういった企業に本資料は役立つのではないかと思う。     
 

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