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2020/10/26

非正規社員の待遇格差判決~その2

 
 正社員と非正規社員との待遇格差に関する注目の裁判について、前回に続いて整理していく。

 10月15日に最高裁第1小法廷で行われたのは、日本郵便の大阪、東京、佐賀の3件である。判決は個別に示されているが、同じような内容なのでポイントをまとめて示したい。

 論点は、正社員に対して以下のものを支給・付与する一方で、契約職員に対してこれらを支給・付与しないという労働条件の相違が改正前の労働契約法20条にいう不合理に該当するかである。

(1)年末年始勤務手当
(2)年始期間の勤務に対する祝日給
(3)扶養手当(以上が大阪)
(4)私傷病による有給病気休暇(東京)
(5)夏期休暇及び冬期休暇(佐賀)

 それぞれ判決理由のポイントを整理してみよう。
 
(1)年末年始勤務手当
・年末年始勤務手当は、多くの労働者が休日として過ごしている期間において、同業務に従事したことに対し、その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有する。
・また、年末年始勤務手当は、正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり、その支給金額も実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。
・正社員と契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、両者の間に年末年始勤務手当に係る労働条件の相違があることは不合理である。
 
(2)年始期間の勤務に対する祝日給
・年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨は、契約社員にも妥当するというべき。
・正社員と契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、祝日給を正社員に支給する一方で契約社員にはこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違があることは不合理である。

(3)扶養手当
・正社員に対して扶養手当が支給されているのは、正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障や福利厚生を図り、扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。
・契約社員についても、扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべき。
・契約社員は、契約期間が6か月以内又は1年以内とされており、原告らのように有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど、相応に継続的な勤務が見込まれているといえる。
・そうすると、上記正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、両者の間に扶養手当に係る労働条件の相違があることは不合理である。
 
(4)私傷病による有給病気休暇
・私傷病により勤務することができなくなった正社員に対して有給の病気休暇が与えられているのは、正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障を図り、私傷病の療養に専念させることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。
・契約社員についても、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、私傷病による有給の病気休暇を与えることとした趣旨は妥当するというべき。
・そして、契約社員は契約期間が6か月以内とされており、原告らのように有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど、相応に継続的な勤務が見込まれているといえる。
・そうすると、正社員と契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、私傷病による病気休暇の日数につき相違を設けることはともかく、これを有給とするか無給とするかにつき労働条件の相違があることは不合理である。

(5)夏期冬期休暇
・正社員に対して夏期冬期休暇が与えられているのは、年次有給休暇や病気休暇等とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図るという目的によるものであると解され、夏期冬期休暇の取得の可否や取得し得る日数は正社員の勤続期間の長さに応じて定まるものとはされていない。
・契約社員は、契約期間が6か月以内とされるなど、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれているのであって、夏期冬期休暇を与える趣旨は契約社員にも妥当するというべき。
・正社員と契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、両者の間に夏期冬期休暇に係る労働条件の相違があることは不合理である。

 このようにいずれも不合理とされ、労働者側の完全勝利となった。制度の目的・趣旨と契約社員の勤務実態を検討し、職務の内容や変更の範囲その他の事情を考慮しても不合理と認定したのである。

 5つのうち、大きな影響を与えるのは、まずは(3)の扶養手当(家族手当)だろう。非正規社員に家族手当を支給する企業は少数だ。継続的な勤務が見込まれるのであれば支給すべきとのことなので、たとえば、「契約を2回更新した場合は支給する」といった仕組みを検討する必要が出てくる。

 人件費の増加要因となるが、非正規社員の待遇を改善し、企業として競争力を高めていくという発想の転換が求められる。    
 

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