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2020/6/1

黒川検事長の退職金

 前回に続いて黒川検事長関連の話題である。旬のテーマに乗るのはテレビのワイドショーみたいであまり好きではないが、本件は人事労務に関りの深い話題を提供してくれるので取り上げる。

 黒川氏の退職金が、規定に照らせば約5,900万円になることを森法相が明らかにした。通常の定年退職であれば約6,700万円だったという。減額の理由は自己都合退職だからだ。安倍首相は記者会見で「訓告処分により減額された」旨を述べたが、これは勘違いかミスリードである。

 自己都合なのに定年退職とそれほど変わらないのか、と疑問に思う人がいるかもしれないが、これは定年退職間近だからだ。

 自己都合の場合、若年時は会社都合の半額程度となるが、黒川氏のように定年間近の場合は、会社都合と同じかほとんど変わりないというのが一般的である。たとえば、定年60歳の企業で55歳以上は同じとするのはよくある例だ。これは、中高年社員の退出を促す仕組みでもある。

 もう1つ、訓告処分に係る減額はないのかという点も気になるだろう。

 これについては、国家公務員退職手当法の第12条(懲戒免職等処分を受けた場合等の退職手当の支給制限)で、次の場合に退職手当等の全部又は一部を支給しないことができるとしている。

①懲戒免職等処分を受けて退職をした者
②国家公務員法第七十六条の規定による失職又はこれに準ずる退職をした者

 ②のケースとは禁固以上の刑を受け失職した場合などだ。つまり懲戒処分でいえば、「免職等」でなければ、退職金の不支給や減額はできないということだ。民間企業も同様の規定を就業規則で定めるところが多い。

 免職“等”とあるが、これは、免職には至らないもののそれに近いケース、民間でいう「諭旨解雇(本来は懲戒解雇だが、情状酌量により退職扱いにするもの)」か、射程に入ったとしても、かなり程度の重い停職までと考えられる。したがって、減給や戒告で退職したとしても、退職金の不支給はもちろん減額もない。まして、懲戒処分に該当しない訓告ではありえないということになる。

  民間企業の判例でも、退職金のもつ功労報奨的性格から、「永年の勤続の功労を抹消させてしまうほどの背信行為がない限り、退職金の不支給は許されない(日本高圧瓦斯工業事件.大阪高昭59.11.29)」とするものや、賃金後払い的性格から、「退職金金額を不支給とするには、それが当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要(小田急電鉄事件.東京高平15.12.11)」としており、懲戒解雇=退職金不支給とならないことを判示している。

  世間では、退職金は不支給でよいとの声も多いが、上記のように退職金には、功労報奨や賃金後払いなどの性格があり、不支給となるのは、長年の勤労と功労を帳消しにするほどの失態があった場合に限られる。世論の気持ちはわかるが、冷静に考えれば、氏の行為がそこまでの不始末でないことは明らかだろう。不支給はもちろん、減額もこのケースでは無理がある。

 さて、本来、黒川氏は2月で定年であったという。そのときに定年退職しておけば、規定の6,700万円がもらえたはずだ。さらに、弁護士として、あるいは企業の社外取締役等として引く手あまただっただろう。もちろん、今後、それなりに活躍の場は得られるだろうが、差額の800万円よりも、こちらの方が氏にとっては痛手となるのかもしれない。    
 

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