2020/4/6

民法改正に伴う労働基準法改正

 民法改正に伴い、4月1日から賃金等請求権の消滅時効などの改正労働基準法が施行された。働き方改革に比べれば地味だが、経営へのインパクトは結構大きいので、その内容と留意事項を確認しておきたい。主要項目は次の3つである。

1.賃金請求権の消滅時効期間の延長
 これまで2年だった賃金請求権の消滅時効期が5年に延長された。ただし、企業への影響を考慮し、当分の間は3年である。対象は、2020年4月1日以降に支払期日が到来する賃金である。

 時効期間延長の対象となるのは、賃金(退職手当を除く)の請求権で、具体的には以下のものである。

・金品の返還(労基法23条、賃金の請求に限る)
・賃金の支払(法24条)
・非常時払(法25条)
・休業手当(法26条)
・出来高払制の保障給(法27条)
・時間外・休日労働等に対する割増賃金(法37条)
・年次有給休暇中の賃金(法39条9項)
・未成年者の賃金請求権(法59条)

 下記の請求権は、現行の消滅時効期間(①②は2年、③は5年)が維持される。特に年休請求権は2年と変わらない点に留意したい。

①災害補償の請求権
…療養補償(75条)、休業補償(76条)、障害補償(77条)、 遺族補償(79条)、葬祭料(80条)、分割補償(82条)
②その他の請求権
…帰郷旅費(15条3項、64条)、退職時の証明(22条)、 金品の返還(23条。賃金を除く。)、年次有給休暇請求権(39条)
③退職手当

 なお、改正後の労基法第115条では、賃金請求権の消滅時効の起算点が「これを行使することができる時」と明記されたが、これは従来と同様、賃金支払期日が起算点という意味である。

 また、“当分の間”とはどれくらいかだが、施行経過5年後に状況を勘案して必要があるときは措置を講じる旨の検討規定が設けられていることから、2025年4月~が切り替えの目途になるのではと予想する。

2.賃金台帳などの記録の保存期間の延長
 事業者が保存しなければならない賃金台帳などの記録の保存期間が5年に延長された。ただし、1と同様、当分の間は3年である。

 保存期間延長の対象となるのは次の①~⑧である。
①労働者名簿
②賃金台帳
③雇入れに関する書類…雇入決定関係書類、契約書、労働条件通知書、履歴書など
④解雇に関する書類…解雇決定関係書類、予告手当または退職手当の領収書など
⑤災害補償に関する書類…診断書、補償の支払、領収関係書類など
⑥賃金に関する書類…賃金決定関係書類、昇給減給関係書類など
⑦その他の労働関係に関する重要な書類…出勤簿、タイムカードなどの記録、労使協定の協定書、各種許認可書、 始業・終業時刻など労働時間の記録に関する書類、退職関係書類など
⑧労働基準法施行規則・労働時間等設定改善法施行規則で保存期間が定められている記録 …時間外・休日労働協定における健康福祉確保措置の実施状況に関する記録など

 改正前の労基則では、記録の保存期間の起算日は「記録の完結の日」等と規定されているが、上記②⑥⑦⑧の記録に関する賃金の支払期日が、記録の完結の日などより遅い場合には、当該支払期日が記録の保存期間の起算日となる。

3.付加金の請求期間の延長
 これまで2年であった付加金の請求期間が5年に延長された。これも当分の間は3年である。対象となるのは、以下のもので、2020年4月1日以降に、割増賃金等の支払がされなかったなどの違反があった場合である。
 
・解雇予告手当(労基法20条1項)
・休業手当(法26条)
・割増賃金(法37条)
・年次有給休暇中の賃金(法39条9項)

 1~3のうち、インパクトの大きいのはやはり1である。4月以降の賃金について、残業代等の未払いがあった場合、当面はこれまでの1.5倍、将来は2.5倍の支払いが必要となってくる。金額はもとより、計算の手間もその分大変となる。そのような事態とならないよう、くれぐれも注意したい。    
 

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