2020/3/9

在宅勤務者の人事評価

 「仕事は社員が会社に集まってやるもの」という習慣に慣れ親しんだ企業が、在宅勤務制度を活用するにはさまざまな検討課題がある。その1つが適用者の人事評価をどうするかである。

 一般の評価制度(特に能力評価や情意評価、行動評価等)は、評価者となる上司が被評価者となる部下の仕事ぶりを日常的に観察することが前提となっている。日常の観察をしたうえで、能力の発揮度合いや、仕事に対する意欲・姿勢を評価するのだ。筆者も評価者研修では、「適正な評価のためには、部下をよく見ることが一番大事」という話をする。実際に評価者が注意深く部下を観察しているかどうかはともかく、日々、部下の働く様子を目にすることで成り立つ制度である。

 在宅勤務は、そのような“常識”を覆すことになる。目の前にいない部下を評価しなければならないというのは、大げさにいえば、評価者にとって革命的な出来事だ。多くの管理者が戸惑うのは間違いない。在宅勤務を導入するのであれば、人事部門は対応を考えておかなければならない。

 では、在宅勤務時の評価をどうするか? 対応の仕方は大きく分けて、「現在の制度のままで運用するか」「在宅勤務に合わせて制度を変えるか」の2つとなる。

 まずは、現在の制度をそのまま活かすやり方である。最低限、事前に運用可能かどうかをチェックしておきたい。業績や成果の評価は、それほど支障は生じないだろうが、問題は能力や意欲等の評価だ。在宅勤務であっても使えるかをシミュレーションしておくとよい。少しは支障があっても、ある程度応用可能であればOKという判断でよいだろう。

 企業によっては、遠隔地にいるとか出向しているとかで、普段の仕事ぶりをつかめない部下を評価するケースもあるはずだ。その際の評価の仕方で応用できるものは活用したい。

 同時に、部下の仕事ぶりを把握しやすいようコミュニケーションの質・量を充実させることも大切だ。メール以外にもチャット、ウェブカメラ等、効果的なツールは以前より格段に増えている。評価のためもあるが、そもそもマネジメントのために重要のはずだ。
 定期的あるいは必要に応じて、面会の機会も設けたい。在宅勤務の場合、面会を社員の自宅で行うわけにはいかないので、会社等に来てもらうことになる。

 在宅勤務者が比較的少数の場合や、勤務日が週に1日など限定される場合には、現在の制度で問題ないだろう。在宅勤務者の比重が大きい企業であっても、実際にはこのパターンが多いと思われる。なお、在宅勤務時を評価対象としないという選択肢もないではないが、それは避けるべきと考える。

 続いて、制度を変えるという選択肢である。 現行の制度では評価が困難、あるいは今後、在宅勤務などテレワークが増えることを想定し、テレワークにも対応できるよう制度を構築し直すという考えである。

 ポイントは、成果の評価である。成果とは何かを部署・業務ごとにしっかりと話しあい、共有することが重要となる。ただ、成果だけを重視すれば、長時間労働を強いるなどの問題が発生しかねないので、成果に至るプロセスとして計画性や効率性なども評価したい。さらに、自己管理も重要な評価項目となるだろう。 別の見方をすれば、自己管理をきちんとできない人に在宅勤務をさせるべきでないともいえる。

 今回は、コロナウイルス対応のため緊急避難的に制度導入をした企業も多いはずだ。そのような企業は、まずは、現在の評価制度で対応せざるを得ないだろう。そして、これを契機に課題を見つけ、今後の制度見直しに役立てるというのが実践的な対応と考えられる。    
 

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