2020/2/3

キャリア開発は会社主導型から社員自律型に

 キャリア開発の方法としては、会社主導でやるか、それとも社員の自律性に任せるかの2つの考え方がある。

 それぞれのメリットを整理すると、会社主導は、

・会社に必要な人材を継続的に育成できる。
・状況に応じた柔軟な人材配置ができる。
・社員が自分では気づかない適性の開発ができる。

 などだろう。一方で社員主導は、

・キャリア開発に意欲的に取り組め、能力・スキルの大きな伸長が期待できる。
・個々の適性に応じた能力・スキルの育成ができる。
・会社の枠にはまらない多様なキャリア開発が期待できる。

 などが挙げられる。

 今のところキャリア開発は、会社主導で行うのが一般的だ。経団連が1月21日に公表した「人材育成に関するアンケート調査結果」の“社員のキャリア形成の現状”は、下記のようになっている。

①「一部の社員が自律的にキャリアを形成している一方、 多くの社員は会社(人事・上司)主導となっている」55.2%
②「総じて会社(人事・上司)主導によって キャリア形成が行われている」18.9%
③「多くの社員が自律的にキャリアを形成している一方、 一部の社員は会社(人事・上司)主導となっている」16.9%
④「総じて社員が自律的にキャリアを形成している」6.0%

 ①と②を会社主導型とすると合計で74.1%、③と④を社員自律型とすると22.9%となり、現状は会社主導が優勢であることがわかる。

 ただ、これからは違ってくるようだ。同調査での、“社員のキャリア形成に向けた今後の方針”は次のようになっている。

①「社員本人の自律性を重視したキャリア形成を基本とする」8.5%
②「社員本人の自律性を重視したキャリア形成を基本としながら、 特定層の社員に対しては、会社が積極的に関与する」54.4%
③「会社の主導によるキャリア形成を基本としながら、 社員本人の意向もできるだけ尊重する」31.0%
④「会社主導によるキャリア形成を基本としながら、 特定層の社員については、社員本人の意向を尊重する」3.8%
⑤「会社主導によるキャリア形成を基本とする」1.1%

 ③④⑤の会社主導型は35.9%に対し①②の社員自律型は62.9%と、一転して社員自律型が優勢となる。

 社員自律型が重視されるのは、これからの時代は多様なキャリアを持つ人材が求められ、その育成には、ある程度社員の自主性に委ねたほうがよいという判断だろう。

 もっとも、自主性尊重と放任は紙一重だ。運用を誤れば、人材がほとんど育たないリスクも起こりうる。

 同調査では、「社員の自律的なキャリア形成に効果的な施策(自由記述)」をいくつか列挙しているが、そのうち核となるのは、”キャリア計画の作成とそれを用いた上司や人事部との面談”と考えられる。まずはキャリアの方向性を確認するということだ。

 その際、単に社員の希望を聞き取るだけでは意味がない。自社の中でどういったキャリアが開発できるかについて、適切なアドバイスが求められる。上司にすべて任せるわけにはいかないので、専門性をもつ人事部門の関与は欠かせない。

 社員のキャリア開発が自律型に移行するなかで、その支援はこれからの人事部門の重要な仕事になるはずだ。    
 

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