2018/8/13

女性の役員登用が進まない

 
 7月末に公表された東京商工リサーチの「女性役員比率」調査によると、2018年3月期決算の上場企業2,375社の役員総数2万7,526人のうち、女性役員は1,049人で役員全体のわずか3.8%(前年3.3%)にすぎないという結果になった。全体の約3分の2(1,563社)は女性役員がゼロとのことだ。

 業種別では、サービス業の6.0%が最も高く、以下、小売業5.9%、金融・保険業5.6%と続く。低い方のベスト3は、建設業2.0%、水産・農林・鉱業3.17%、製造業3.19%で、女性の活用が進んでいるかどうかがそのまま反映されているといえそうだ。

 政府は2015年12月、第4次男女共同参画基本計画を閣議決定し、上場企業の女性役員の割合を2020年までに10%とする目標を掲げている。内閣府の「女性役員情報サイト」で、女性役員が1名以上いる上場企業のリストを作成・公表するなど、広報および促進に努めているのだが結果は芳しくなく、目標達成は絶望的である。

 女性役員が少ないのは、ひと言でいえば、女性管理職が少ないからだ。

 役員を大ざっぱに分けると、常勤取締役、非常勤取締役、監査役となる。このうち、役員の多数を占めるのは常勤取締役で、これは社内の管理職から登用されることがほとんどだ。いわゆるビジネスパーソンの“上がり”で、圧倒的に男性社員が多い。一方、女性の場合は、弁護士や会計士等の専門職の立場から、非常勤取締役や監査役となるケースが多い。常勤取締役になったとしても、経営全般を見るというよりは、専門部門に特化した役割を担うケースが多く、そのような役員は座席数が限られている。

 では、女性管理職比率はどうなっているかというと、厚生労働省の2017年度「雇用均等基本調査(確報版)」によれば、部長相当職6.6%(前年度6.5%)、課長相当職9.3%(同8.9%)、係長相当職15.2%(同14.7%)である。役員予備軍といえる部長相当職で、15人に1人しか女性はいないのである。まずは、女性管理職の割合を増やさないことには、常勤取締役の大幅な増加は望めない。

 内閣府のサイトでは、2015年の諸外国の状況も示しているが、それを見ると、ノルウェーの38.7%を筆頭に、フランス34.4%、ベルギー27.0%などEU諸国の高い数値が続いている。ただ、これらの国が昔から高かったわけではない。EUでは、2020年までに女性役員比率を40%にするよう加盟国に要請しており、その実現策としてクオータ(割当)制が導入されたためである。イタリアが2012年の4.2%から2015年には24.6%になるなど、クオータ制の効果は強力だ。

 今年の6月から、上場企業の行動指針を定めたコーポレートガバナンス・コードに女性役員の登用を促すコードが組み込まれたものの劇的な効果があるとも思えない。
 EU並みとまでは言わないが、せめて政府目標程度の数値(10%)くらいは早期に達成してほしいものだが、そのためには、クオータ制度といった強硬手段をとるしかないのが実状といえる。



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