2025/6/29

能力の蓄積を実感させるには

 国家公務員で働き続けたい人は、全体の5割にとどまる―。内閣人事局の職員アンケート結果が話題となっている。

 6月24日に公表された令和6年度「国家公務員の働き方改革に関する職員アンケート結果」によると、勤務継続意向について「継続して勤めたい」との回答は48.2%で、「継続したいが、不安がある」が29.3%、「数年以内に辞めたい」が9.5%だった。

 では、5割という継続勤務意向をどうとらえるか? ちなみに、日本能率協会マネジメントセンターが2023年に行った「パフォーマンスにつなげるエンゲージメント調査」で、「あなたは現在の会社でずっと働き続けたいと思いますか」は61.0%だった。これに比べると、国家公務員のほうが継続勤務意向は低いということになる。

 継続勤務に不安がある要因として、上位に挙がったのは以下のものである。

・能力・スキルを蓄積できている実感がないから(39.0%)
・仕事以外の活動とのバランスがとれないから(36.2%)
・育児や介護との両立が困難だから(35.2%)

 また、数年以内の離職意向を有する要因として、上位に挙がったのは以下のものである。

・自分にとって違う仕事が合っている・してみたいと思うから(49.9%)
・能力・スキルを蓄積できている実感がないから(45.8%)
・仕事自体に興味が持てないから(39.9%)

 いずれも「能力・スキルを蓄積できている実感がないから」が上位の要因に挙げられている。公務員といえば、2~3年で職場を異動し、専門知識やスキルを習得しづらいというイメージがあり、それが原因となっているのかもしれない。また、仕事の特性として、成果が数字で表れづらいことや、明確な競争相手がいないため能力を比較しづらいことなども原因となるだろう。

 このように国家公務員が「能力・スキルを蓄積できている実感がない」ことには一定の理解ができる。もっとも、民間企業にも実感を持てない社員は多くいる。主要な離職要因にもなっており、それを防ぐためには何らか手を打つ必要性がある。能力・スキルの蓄積を実感してもらうためには、次の4つの観点から対策を講ずることが有効である。

1.能力・スキルの【可視化】
 スキルマップ等により、職種や等級ごとに求められるスキルを明確化し、社員自身の現状とのギャップや成長度合いを可視化できるようにする。また、デジタルバッジや研修履歴の記録により、社内システム上で受講済み研修・習得スキルを「見える化」し、自身の成長実感を持たせることなども考えられる。

2.成長のための【支援】
 メンター制度やOJTの再整備のほか、eラーニング、外部研修受講費補助など、社員が自律的に学べる環境を整備する。また、ジョブローテーションにあたっては、意図、必要性、キャリアパスにおける位置づけなどを説明することで、スキルの広がりと成長実感を与える。

3.スキル活用の【機会創出】
 社内公募制度や新規事業・プロジェクトへの応募機会を設け、習得したスキルを活用する場を提供する。また、社内副業や他社との協業、越境学習等の場をつくり、社外との交流・実践機会を通じ、スキルの「使い道」を体感してもらう。

4.定期的なフィードバックによる【承認】
 1on1ミーティング等を通じて、日常の中で上司が「成長している点」を具体的に伝えることが、成長実感につながる。また、表彰・認定制度を設け、スキル獲得や成果に対して称賛・表彰する文化を育て、努力が報われる仕組みを作る。

 社員は実際にはスキルを蓄積していても、それに気づいていなかったり、活用できていなかったりするために、「実感」を持てていないケースが多い。これは本人にとっても、企業にとっても、もったいないことだ。社員にわかりやすく成長を実感してもらえる仕組みとして、「可視化」「支援」「機会創出」「承認」のプロセスを参考にしてほしい。         

 


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