2018/6/17

同一労働同一賃金の最高裁判決~その2

 同一労働同一賃金の最高裁判決について、2つ目の「ハマキョウレックス」の要旨を確認する。

 まず、有期契約労働者と無期契約労働者との間に労働条件の相違があり、労働契約法20条(※)に違反したとしても、有期契約労働者の労働条件が無期契約労働者の労働条件と同一となるものではないことを指摘した。

(※労働契約法20条)
 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

 その上で、同条の「不合理と認められるもの」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理であると評価することができるものとし、以下のように諸手当の合理性を判断した。

●住宅手当の不支給
 契約社員については就業場所の変更が予定されていないのに対し、正社員については、転居を伴う配転が予定されているため不合理ではない

●皆勤手当の不支給
 出勤する者を確保することの必要性については,職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではなく、また、将来転勤や出向をする可能性や、上告人の中核を担う人材として登用される可能性の有無といった事情により異なるとはいえないことから不合理である

●無事故手当の不支給
 安全運転及び事故防止の必要性については,職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではないため不合理である

●作業手当
 特定の作業を行った対価として支給されるものであるが、契約社員と正社員の職務の内容は異ならないため不合理である

●給食手当
 契約社員と正社員の職務の内容は異ならない上,勤務形態に違いがあるなどといった事情はうかがわれないことや、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、勤務時間中に食事を取ることの必要性やその程度とは関係がないため不合理である

●通勤手当が正社員よりも少額
 労働契約に期間の定めがあるか否かによって通勤に要する費用が異なるものではない。また、職務の内容及び配置の変更の範囲が異なることは、通勤に要する費用の多寡とは直接関連するものではないことから不合理である

 このように、「ハマキョウレックス」においても、多くの諸手当の不支給や格差が不合理であることが判示された。

 今回の判決のポイントを再確認しよう。これについて、時事通信がわかりやすくまとめているので、それを引用する。

1.労働契約法20条は、期間の定めの有無による不合理な労働条件格差を禁止し、職務内容などの違いに応じた均衡の取れた処遇を求める規定
2.再雇用された労働者は退職まで賃金が支払われ、老齢厚生年金の支給も予定される。格差が不合理かを判断する上で、そうした事情を考慮するのが相当
3.労働条件格差が不合理かどうかは、賃金の総額を比較するだけではなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき

 3は企業側に大きな負担となる。総額で一定範囲内で収まればOKというわけではなく、個別項目の合理性も求められるからだ。合理性の判断のポイントは、当該賃金項目の支給の必要性や性質である。

 一方で2に関して、再雇用者の賞与不支給が、退職金の支給や年収額への配慮などから容認されたのは企業にとって朗報である。ただ、逆に言えば、許容範囲を超えるような差は認められないということでもある。再雇用者に対する賞与の不支給を無条件に認めたわけではないことに留意する必要がある。

 以上を今後の企業の対応の観点からまとめると、次のようになる。

1.賃金、特に諸手当について、正社員と非正規社員とで異なる場合は、その合理性を再検証する必要がある。
2.定年再雇用者と正社員との格差を検証し、あまりに大きすぎる場合は見直す必要がある。
 
 多くの企業にとり、重い課題を突き付けられたのは確かである。



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