2025/2/2

「管理職になって良かった」は6割

 近年、「管理職は罰ゲーム」というフレーズをしばしば目にする。実際、経営者や幹部社員から、若手社員や部下が管理職になりたがらないという愚痴を聞くことも多い。日本能率協会マネジメントセンターが2023年に実施した「管理職の実態に関するアンケート調査」では、一般職の約77.3%が「管理職になりたくない」と回答している。2018年の同調査では72.8%だったので、その傾向は高まっているといえそうだ。

 管理職になりたくない理由として一般に考えられるのは、①業務負担・責任の重さへの不安、②報酬面の魅力不足、③ワークライフバランス悪化への不安、④専門職志向の高まり、などだろう。

 ①の背景には、先輩管理職の疲弊している姿を目にしていることや、自らのリーダーシップやマネジメントスキルに対する自信のなさがあると思われる。②は、責任が増えるのに給与がそれほど上がらない、場合によっては残業手当がつかない分、減ってしまうこともあり得るということだ。

 ③は、残業や休日出勤のほか、社内外での付き合いが増えそうというのがあるだろう。特に女性は家庭の問題もあり、大きな要因になっていると思われる。④は、マネジャーよりも専門スキルを磨いた方が面白いし、キャリアにも役立つと考えるのは理解できる。

 このような理由があるなか、企業としては、管理職になることの魅力をあらためて考えなければならない。

 では、実際に管理職になった人の意見はどうかと言えば、「マイナビ転職」が1月9日に発表した「管理職の悩みと実態調査」結果で、「管理職になって良かった」と感じる人は60.8%に上っている。面白いのは、係長・チーム長クラスでは51.5%、本部長クラスは80.0%で、役職が上がるほど「良かった」と感じる人が多い傾向にあることだ。

 「管理職になって良かったこと」として自由回答で挙げられたのは、「部下の成長に喜びを感じる」「自分の課を持ってある程度自由な采配ができる」「給料面での余裕で家庭も安定する」などだ。こういったメリットが、上位の役職になるほど多く得られるからと考えられる。

 管理職になってからのポジティブな変化として挙げられたのは、「金銭的不安が減った」67.1%、「自信が付いた」66.5%、「交友関係が広くなった」61.1%などだ。一方でネガティブな変化は「仕事の比重が増えた」75.8%、「心身の健康が損なわれた」68.9%、「プライベートや家族との時間を楽しめなくなった」55.4%など。これらの要因は、先ほど述べた「なりたくない理由」と重なる。

 今後「昇格したい」と考える人は、「自社で」「他社で」を合わせると50.9%と約半数に上る。一方、「今のままでいい」は33.3%、「管理職を辞めたい」は15.9%となっている。「昇格したい」は係長・チーム長が42.8%に対し、本部長は68.6%となっており、役職が上がるにつれ昇格意欲が高まるのが見て取れる。

 管理職を続けていくうえで希望するサポートや制度は、「管理職手当の増額」40.1%が他を引き離してのトップで、以下、「残業手当の支給」21.6%、「勤務時間外は対応しなくてよい制度」19.6%と続く。

 報酬面でのサポートを望む声が多いのは、管理職の待遇に不満があることの裏返しである。「自身の働きと給料は見合っているか」という質問に、「見合っている」は4割弱だったのに対し、「見合っていない」が6割強を占めた。報酬に不満を抱えながら仕事をする管理職が多数いることがわかる。

 最近では、初任給30万円超をアピールする企業が増え、初任給相場の高騰が話題となっている。一方で中高年層の待遇改善はあまり聞こえてこない。初任給も大事だが、中高年層、特に管理職の待遇改善にも留意が必要といえそうである。        

 


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