2019/3/12

社内失業者にならないために

 
 世の中、深刻な人手不足のはずだが、その一方で社内に“失業”状態の人がいる―。

 そういった社内失業の実態についてエン・ジャパン社が調査を行った。ちなみに社内失業とは、同社の定義によると「労働者が正社員として企業に在籍しながら、仕事を失っている状態」である。もちろん、まったく働かないわけではなく、好きな仕事やラクな仕事、慣れた仕事だけをやるような社員(中には何らかの事情で仕事を与えられない社員もいるだろうが)という認識でよいと思う。

 企業の立場からは、そのような社員をどう処遇するか、労働者の立場からは、そうならないためにどうするかが大きな課題となる。その辺りのことを、主な調査結果を見ながら考えてみたい。

 まず、社内に失業状態の社員がいるかどうかについて、23%が「いる」(いる:6%、いる可能性がある:17%)と回答している。業種別では、メーカー(28%)、流通・小売関連(25%)、サービス関連(24%)が多い。規模別では、当然ながら規模が大きくなるほどいる企業は増える。1000名以上だと41%に上る。

 属性を見ると、年代は「50代(57%)」「40代(41%)」の順で、役職は「一般社員クラス」が80%と圧倒的である。職種は「企画・事務職(46%)」が最多で、営業職(31%)が続く。技術系や専門職系は比較的少ない。ただし、技術系でも「IT・Web・ゲーム・通信」は14%と3番目に入っており、加齢に伴う技術の陳腐化や、創造力・体力の衰えなどが推測される。

 社内失業に至った要因としては、「該当社員の能力不足(70%)」「該当社員の異動・受け入れ先がない(51%)」「職場での人間関係が悪い(26%)」が上位に挙げられており、本人の問題と考える企業が多いようだ。「経営環境の変化(11%)」「組織再編成による部門縮小・廃止(6%)」「事業・サービスの見直し(5%)」といった外部要因は比較的少なく、企業の認識としては、これらの環境変化に対応できないのが最大の要因ということだろう。

 企業の対応策としては、「該当社員への教育(35%)」「特に何もせず、状況を見る(22%)」「職階の見直し(21%)」などとなる。「教育」がトップに来ているのは救いだが、これは当の社員がやる気を出さなければ効果は低い。ちなみに解雇は11%で8番目である。まあ、簡単に解雇できないからこそ社内失業が生じるわけだが。

 調査によれば、社内失業者はいないとする企業が多いが、その予備軍、というか1歩2歩手前の人は結構いるのではないかと思う。社内失業者になるかどうかの分岐点は、端的にいえば、自己を変えられるか、それとも変えられないかである。人間だれしも歳を重ねると変化を避けたくなる。その気持ちはわかるが、実際のところ社内失業者の周囲のメンバーへの負の影響は大きく、特に上司は大変である(たいてい年上の部下となる)。

 そうならないために、少しの変化を心がけてみてはどうかと思う。何も大胆な自己革新を目指さなくてもよい。たとえば、これまで経験のない、後輩社員の業務を手伝うなどだ。たいしたことではなくても、そういった態度は確実に職場にプラスの影響を与える。変化には少しの苦労を伴うかもしれないが、何もしないことによる“取り残され感”を味わうより結局はラクなのではないだろうか。

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