2019/2/25
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パート有期法の解釈通達~その3 |
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1月末に発出されたパートタイム有期雇用労働法の解釈通達のポイントは、 1.今回の改正の中核となる第8条と第9条に関する解釈 2.第8条と第9条の判断手順 の2つである。第3回では2の判断手順について整理する。 まず、第8条および第9条に関し、「職務の内容が同一であること」の判断手順がP11以下に示されている。これを簡単にまとめると、 ①「業務の種類」が同一であるかどうかをチェックする。 ②業務の種類が同一であると判断された場合、「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断し、明らかに異なっていれば、業務の内容は「異なる」と判断する。 ③「実質的に同一」と判断された場合、両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかどうかをチェックする。 という手順となる。通達では、それぞれ詳しい解説をしているので、実際のチェックにおいては通達を参照していただきたい。ちなみに①を詳細に見ると、「『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較」するとある。リンク先をご覧になればわかるが、あまり実用的とはいえず、一人二人ならともかく、多数の職務がある場合にこれを用いて比較するのは手間がかかりそうだ。 次に、第9条の「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことの判断手順は以下のとおりである(通達P15~)。 ①通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について、配置の変更に関して、転勤の有無が同じかどうかを比較する。この時点で異なっていれば、「変更されることが見込まれない」と判断する。 ②転勤が双方ともあると判断された場合は、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較する。この時点で異なっていれば、「変更されることが見込まれない」と判断する。 ③転勤が双方ともない場合、または双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較する。まずは、職務の内容の変更(事業所内における配置の変更の有無を問わない)の有無を比較し、この時点で異なっていれば、「変更されることが見込まれない」と判断する。同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、異同を判断する。 通達では、法第8条における「職務の内容及び配置の変更の範囲」の異同についても、上記の観点から判断できると述べている。 最後に、もう1つ重要なポイントとして、第8条と裁判との関連に関する記述をまとめておきたい(通達P26~)。 ・第8条は、私法上の効力を有する規定であり、短時間・有期雇用労働者に係る労働契約のうち、同条に違反する待遇の相違を設ける部分は無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為による損害賠償が認められる。 ・また、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との待遇の相違が第8条に違反する場合であっても、同条の効力により、当該短時間・有期雇用労働者の待遇が比較の対象である通常の労働者の待遇と同一となるものではない。 ・ただし、個々の事案に応じて、就業規則の合理的な解釈により、通常の労働者の待遇と同一の待遇が認められる場合もあり得る。 ・第8条に基づき民事訴訟が提起された場合の裁判上の主張立証については、待遇の相違が不合理であるとの評価を基礎付ける事実については短時間・有期雇用労働者が負う。 ・当該相違が不合理であるとの評価を妨げる事実については事業主が主張立証責任を負う。 パート・契約社員の待遇が正社員に比べて違法に低い場合、その待遇は無効となるが、だからといって正社員と同じ待遇になるわけではないということだ。この点が明示されたのは、企業にとっては喜ばしいといえる。 3回にわたってパート有期労働法の新通達の要点をまとめてきた。日本企業が同一労働同一賃金に本格的に取り組むのは初めてであることに加え、官邸主導ということもあって、厚労省もその周知と説明に力を入れている。実施に向けての文書が次から次へと出てくる。 今回の通達もボリュームが多く、かつ、公文書特有のお堅い表現のため、担当者は内容を消化するのも大変だと思う。ただ、いずれ事業主向けにわかりやすく“翻訳”したパンフレットが出るものと思われるので、それを参考にするのもよいだろう。 この原稿を書いている折しも、契約社員に退職金を支給しないのは不合理との高裁判決が下された。パート・有期社員のいる企業にとって、同一労働同一賃金は避けて通れない問題であり、しかも、その対応は急を要していると心得たい。 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。 |
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