2019/1/7

部下のモチベーションを高めるには

 
 
 
 年明けは気持ちも新たに何かに取り組もうとする意欲が高まる。いわばモチベーションが高い状態である。会社や上司からすると、社員・部下全員のモチベーションが常にマックスであればよいのだが、現実は千差万別で、人により程度が異なったり、同じ人間でも時期により高低があったりする。
 それでは、部下のモチベーションを高め、維持させるにはどうすればよいのだろうか? 以前(2014年)、日経新聞に掲載された滋賀大学小野善生准教授による「やさしいこころと経済学第5章『やる気を引き出す』」を参考に考えてみたい。

 モチベーションには2つの種類があるといわれる。1つは、外部からの報酬や罰により影響を受ける外発的モチベーションで、もう1つは、外からの見返りを期待するのではなく、行動そのものに満足を得る内発的モチベーション、いわゆる“やりがい”である。外発的モチベーションと内発的モチベーションは、どちらか一方だけでは長続きせず、両者のバランスが大切となる。

 外発的モチベーションは他者が与えるものなので、会社・上司としてコントロールできる。典型的なのは業績に応じて給与・賞与を増減させる仕組みや人事評価に基づく昇降格、うまくできた部下への称賛などである。
 ただし、効果は未知数で、場合によっては外的な報酬により、内発的モチベーションを低下させてしまうケース(アンダーマイニング効果)があるとの実証実験もある。元々はやりがいを感じていた仕事なのに、業績に応じて高報酬が得られるようになると、やりがいよりもそちらに関心が移ってしまうようなケースである。

 一方、内発的モチベーションは基本的に部下次第なので上司のコントロールは難しい。ただし影響を及ぼすことは可能である。では、どのようにして影響を及ぼすか?

 内発的モチベーションが得られる要因には、①達成に向けての手ごたえを感じられる「有能感」と、②自分でやりたいようにできる「自己決定感」とがある。上司としてこの2つを促進させる取り組みが必要で、①の観点からは、褒めたり、適切なアドバイスを与えたりして自信を持たせること、②の観点からは、権限委譲がポイントとなる。
 ただし、副作用もある。「上司に褒められなければならない」「任されたからには絶対に成果を上げなければならない」といったプレッシャーが内的モチベーションを低下させるケースで、先に挙げたアンダーマイニング効果の一例といえる。

 また、褒め方にも注意が必要で、原則は、①誠実に褒める、②特定の行動を具体的に褒める、③努力したことを褒める、④肯定的なフィードバックを与えること、の4つである。これらを実行するには、部下をしっかりと観察していなければならない。安易に褒めればよいというわけではなく、それなりの努力が求められるということだ。

 最後に、リーダーシップとマネジメントの観点からのモチベーション向上策を触れておきたい。
 リーダーシップにおいて重要なのは、ビジョンを明らかにすることである。部下がそのビジョンに共有できれば内発的モチベーションは大いに高まるからだ。
 一方、マネジメントにおいて重要なのは、成果に対する適切な報酬、昇進といった外発的モチベーションを高める仕組みである。これらがきちんと機能するには、日常の適切なマネジメントが必須条件で、これは上司の大きな役割である。部下の仕事に対する適切な評価やフィードバックがポイントといえる。
 

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