2018/10/1
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非正規社員への説明義務の強化 |
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働き方改革の一環として、2020年(中小企業は2021年)4月から施行される改正パートタイム・有期雇用労働法と改正派遣労働法では、「同一労働同一賃金」が焦点となっているが、もう1つのポイントが非正規社員に対する説明義務の強化である。今回はその内容を整理しておきたい。 Tweet説明義務については、これまで、パートタイマーと派遣労働者に対して、 ・「雇入れ時の待遇内容(パート労働法14条、派遣法31条の2)」と ・求めがあったときに「待遇決定に際しての考慮事項(パート労働法14条、派遣法31条の2)」 という規定があった。 今般、これに加えて、 ・有期労働者も上記規定の対象とすること ・パートタイマー、有期労働者、派遣労働者からの求めがあったときに「待遇差の内容・理由等」の説明義務を新たに課した。 以上を整理すると次のようになる。
このうち、パートタイマー・有期労働者について詳細を確認しておこう。 (1)待遇内容(雇入れ時) パートタイマー・有期労働者に対して説明義務が生じるのは以下の5項目である。 ①待遇の差別的取扱いの禁止 ②賃金の決定方法 ③教育訓練の実施 ④福利厚生施設の利用 ⑤通常の労働者への転換措置 (2)待遇決定に際しての考慮事項 以下について、決定をするにあたって考慮した事項を説明しなければならない。 ①労働条件に関する文書交付等 ②就業規則の作成・変更の際の意見聴取の手続き ③上記(1)の①~⑤ (3)待遇差の内容・理由 待遇差の説明には、まず、誰と比較するかが問題となる。この点につき、現段階では確定していないが、労政審の建議では、「事業主に説明を求めた非正規雇用労働者と職務内容、職務内容・配置変更範囲等が最も近いと事業主が判断する無期雇用フルタイム労働者ないしその集団」といった案が挙げられており、こういった形で指針等で示されることが予想される。 これら説明義務の違反に対する罰則はないが、行政による指導や勧告の対象にはなる。また、裁判外紛争解決手続 (行政ADR)の対象にもなる。さらには、万一、同一労働同一賃金で訴訟となったときに不利に働くのは明らかである。説明義務を果たさないのは高リスクと心得るべきだろう。 説明により社員に納得してもらうのがベストであるが、必ずしも納得を得られるまで説明する必要はない。ポイントは、どれだけ合理的な説明ができるかである。 もし、合理的な説明ができないのであれば、それが可能となるよう労働条件を見直す必要がある。その際は、非正規社員の処遇を正社員に近づけるのが基本だが、合理性の低い手当など正社員の処遇に不合理なものがあれば、その改廃も検討するなど、「正社員→非正規社員」という逆の視点も持っておきたい。 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。 |
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