2018/9/24

年休時季指定義務化に伴う基準日の取扱い

 2019年4月から、すべての企業で、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうちの年5日分について、会社が時季を指定し取得させることとなった。

 労基法では、入社後6ヵ月勤務し、8割以上出勤した労働者に年休の権利を付与することになっているが、多くの企業は、その付与日(基準日)を労働者ごとに設定するのではなく、年1日あるいは2日、一定の日(たとえば4月1日)に統一しているはずである。そうすると、労働者によっては、1つの権利期間が終わらないうちに、次の期間が到来し、年5日の指定義務をどうするかという問題が生じる。
 そういったケースへの対応の仕方が厚生労働省から示されたので、以下、内容を見てみよう。

①入社日から年次有給休暇を付与する場合など、法定の基準日(雇入れの日から半年後)より前に10日以上の年次有給休暇を付与する場合

⇒使用者は付与した日から1年以内に5日指定して取得させなければならない。

  法定基準よりも前倒しで付与した場合である。たとえば、入社時点で10日与えたならば、入社日から「5日」の指定義務が発生するということである。

②入社した年と翌年で年次有給休暇の付与日が異なるため、5日の指定義務がかかる1年間の期間に重複が生じる場合(全社的に起算日を合わせるために入社2年目以降の社員への付与日を統一する場合など)

⇒重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間(前の期間の始期から後の期間の終期までの期間)の長さに応じた日数(比例按分した日数)を、当該期間に取得させることも認められる。

 先に例示したケースである。典型的な例として、4月1日入社した社員が10月1日に10日間、翌年4月1日に11日の権利が付与されるとすると、10月1日から翌々年の3月31日(18ヶ月)までの間に、5日÷12×18=7.5日以上指定すればよいということだ。
 あくまで「認められる」ということなので、10月1日から翌年の3月31日までに、5日を指定するのは問題ないはずだ。一方で、5日÷12×6=2.5日という計算をして、2.5日以上を指定するという取り扱いは不可となるだろう。

③上記①・②の期間経過後は当該期間の最終日の翌日からの1年間に5日の指定義務がかかる。

  これは当然の取扱いであり、特に問題はないだろう。法の定め通りに運用するということである。

④10日のうち一部を法定の基準日より前倒しで付与し、労働者が自ら年次有給休暇を取得した場合

⇒分割して前倒しで付与した場合には、付与日数の合計が10日に達した日からの1年間に5日の指定義務がかかる。当該日以前に、分割して前倒しで付与した年次有給休暇について労働者が自ら取得していた場合には、取得した日数を5日の指定義務から控除することができる。

  4月1日入社した社員がその時点で5日、7月1日にさらに5日付与されたとすると、「5日」の指定義務が生じるのは7月1日からの1年間になるということである。このとき、4月1日から6月30日までの間に2日を自主的に取得していれば、その分を差し引いた「3日」の指定義務でよいということだ。

 今回の厚労省の例示により、年休基準日を統一している際の問題は解消できると思う。以前のコラムでも指摘したが、今般の義務化では基準日を統一しないと管理が煩雑となる。もし、統一をしていないのなら、この機会に統一を進めるべきと考える。



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