重本コンサルティングオフィス
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2018/6/25

労働時間貯蓄制度

 エアトリという旅行会社が、海外で実践されている働き方で、日本でも導入可能なものはないかというテーマでアンケート調査を行っている(「他国の働き方」に関するアンケート調査)。

 「理想的なもの」と「日本でも取り入れることができそうなもの(現実的)」を、9つの選択肢から選ぶ方式で、結果は、オランダの「時間貯蓄制度」が、いずれも2位(理想的13.6%、現実的12.9%)で両者のギャップも小さかった。

 ちなみに、「理想的」の1位(14.3%)はブラジルの「バケーション休暇」(1年のうちに連続30日の有給を与えなければいけない)である。もっとも、現実的」では下から2番目(8.2%)と、理想と現実とのギャップの大きさを表す結果となったが。

 さて、労働時間貯蓄制度(こちらの用語が一般的なので、以下これを用いる)の本家はドイツで、1990年代後半から普及しはじめた。あらためて定義をすると、「所定労働時間を超えた労働時間を労働時間口座に貯蓄しておき、後日、休暇等の目的で使うことができる制度」である。

 会社側は繁閑による雇用量の増減が避けられると同時に残業代を支給しなくて済み、労働者も柔軟に休暇を取得できるという労使双方にメリットのある仕組みだ。清算期間(口座の有効期限)や上限は労使協約により定めるが、それぞれ1年以内・60時間程度が多いという。ただし、長期の清算期間を設け、たとえば早期退職に使うケースもあるそうだ。

 こう見るとなかなか魅力的な制度であり、実際、労働時間に関する政府の審議会で、参考制度として紹介されているケースも見かける。

 ただ、現在の日本では、労基法24条(賃金の全額払、毎月1回以上払の原則)や37条(時間外・休日の割増賃金)に違反するので本制度は使えない。無理に使うとすれば、法定割増分を上回る部分をポイント化して貯蓄口座に回すような方法となる。これも24条に抵触する可能性があるが。

 また、たとえ法改正して導入できるようになったとしても、機能しないのではと思う。年次有給休暇の取得率が5割にも満たないこの国で、口座に溜まった労働時間を使う労働者がそんなにいると思えないからだ。となると、必要なのは有効期限の来る貯蓄時間を換金する仕組みである。そうしないと、膨大なサービス残業が発生しかねないからだ。
 そしておそらく、多くの労働者は休暇として使わずに換金を望む。換金であれば、職場の同僚に迷惑をかけなくて済むからだ。そうなると、結局は今と同じで、残業代を給料日にもらうか、年度末にまとめてもらうかの違いになるだけだ。

 そもそも、ドイツでこの制度が広まったのは、世界最高水準の時短の進展とグローバル化による競争環境の激化が背景にあるという。つまり、労使間で定めた所定労働時間と実労働時間との間の乖離が大きくなったため、その乖離分の労働時間を貯蓄し活用する仕組みが考え出されたのである。労働側にも、レイオフを免れるというメリットもある。
 一方、日本では、所定労働時間と実労働時間の乖離はあるものの、これは今に始まったことではない。レイオフも行われていないのであまり関係ない。

 ‥‥とネガティブなことを書いたが、時間外労働の対価の1つとして本制度が認められれば面白いことができるのは確かだ。たとえば、超長期の口座保有により膨大な労働時間を貯め込み、定年退職前に2年間の休暇(もちろん有給)をまとめて取得できるなら、残業も少しラクに思えるようになるかもしれない。それができるツワモノがいればの話だが。



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