2018/1/23

社員のエンゲージメントを高めるには

 近年、人事の世界で社員のエンゲージメント(engagement)が重視されるようになってきた。エンゲージメントという言葉は元々、「婚約」「約束」といった意味だが、人事用語に置き換えれば、「社員が自社に愛着をもっているか」ということである。

 愛着があれば成果も期待できるだろうから、企業にとっては当然、エンゲージメントの高い社員が多い方が望ましい。社員が活き活きと働いている姿が想像でき、定着率もよくなるに違いない。

 それでは、エンゲージメントの高い社員というのはどれくらいの割合いるのだろうか?

 人材サービスのアデコ社が実施した「従業員エンゲージメント」に関するアンケート調査によると、「あなたは、会社や仕事に誇りや愛着をもっていますか(単一選択)」という質問に対して次の結果が出ている。

●「会社」に誇りや愛着がある
 「非常にそう思う」    8.1% 
 「そう思う」        39.4%  
 「どちらともいえない」 31.3%   
 「あまり思わない」   12.7% 
 「まったく思わない」   6.7%

●「仕事」に誇りや愛着がある  
 「非常にそう思う」    8.7%   
 「そう思う」        42.0%   
 「どちらともいえない」 29.0%   
 「あまり思わない」    9.8%  
 「まったく思わない」   5.9%

 「非常にそう思う」と「そう思う」を「愛着がある」と解すれば、回答は両者ともに約5割となった。社員の半分程度は愛着を感じているということだ。
  当然、企業により差があるはずで、「愛着がある」が3分の2を占めるような企業だと、エンゲージメント優良企業といえそうである。

 では、どのような条件が整えば、社員は会社や仕事に誇りをもつのだろうか? 同調査の「勤務先に誇りや愛着をもっている理由は(複数選択)」という質問に対する上位3つ、下位3つの結果を見てみよう(下位は「その他」を除く)。

●上位3つ
 「仕事に社会的な意義を感じている」     47.4% 
 「雇用が安定している」              29.1%  
 「ワークライフのバランスと柔軟性がある」  26.1%

●下位3つ
 「適切な地位に就かせてくれる」         10.4%   
 「直属の上司が適切に評価・指導してくれる」 10.1%   
 「経営層に優れたリーダーシップがある」     8.4%

 「仕事の社会的意義」が大差をつけてのトップとなり、仕事そのものが大きな要因となることが明らかとなった。「雇用が安定している」が上位に入る一方で、「直属の上司が適切に評価・指導してくれる」が下位なのも意外である。経営層のリーダーシップは項目中の最下位で、社員のエンゲージメントにあまり影響を与えていないのも興味深い。

 逆に、エンゲージメントを弱めるケースとはどのような状況だろうか? 同調査の「自社へ貢献したいという意欲や、職場への誇りが失われるのは、どんなときだと思いますか(複数選択)」という質問の上位・下位3つを確認してみよう(下位は「その他」「特にない/わからない」を除く)。

●上位3つ
 「給与やポジションがあがらない」       41.7%   
 「上司が適切に評価してくれない」      35.8%
 「経営層に期待ができない」          35.3% 
 
●下位3つ  
 「職場のチームワークに課題がある」    23.9%   
 「仕事に社会的意義を感じない」       19.9%   
 「今後のキャリア形成がイメージできない」 19.1%

 非常に面白い結果が表われた。「地位」「上司の評価」「経営層」など、先の「勤務先に誇りや愛着をもっている理由は」で下位となった事項が、この質問に対しては上位となったのだ。これらは、エンゲージメントを向上させる要因にはならないが、喪失させる要因になるということだ。エンゲージメントを高める取り組みと、エンゲージメントを下げないための取り組みは別と考えたほうがよさそうである。

 恒常的な人材不足が見込まれるなか、エンゲージメントの向上は人事の重要課題になることが予想される。アデコ社の調査結果は示唆に富んでおり、企業の取り組みに大いに役立つと思う。



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