2018/2/6
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役職定年制の是非 |
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「課長は50歳まで」「部長は55歳まで」など、一定年齢で役職を降りてもらう役職定年制は、大企業を中心に取り入れているところが多い。少し古いが人事院の「平成22年度民間企業の勤務条件制度等調査」によると、役職定年制がある企業は20.5%で、500人以上規模だと35.4%である。 元々は、定年を延長する際、人件費抑制や組織活性化などを狙いに、旧定年年齢をもって役職を外す仕組みであったという。その後、低成長下で組織の拡大が見込めなくなる中、ポスト不足に対応するための機能も持つようになった。 本来、役職者の任免をきちんと行えば、このような仕組みは不要なのだが、評価があいまいで社員の和を重要視する日本企業では、シビアな任免は回避されることから、導入が進んだといえる。 役職定年制の主なメリットは以下のものである。 ・組織の新陳代謝を促すことができる ・若手や中堅社員の昇進モチベーションを向上できる ・報酬とパフォーマンスの乖離の縮小ができる 一方、デメリットとしては次のものがある。 ・役職定年者のモチベーションが低下する ・役職者として有能であっても変えざるを得なくなる ・定年年齢が昇進年齢となるケースが出てくる(たとえば、51歳で無理に部長職にしてしまう) こういった問題を抱えながらもそれなりに機能してきた制度であるが、現在はメリットよりもデメリットが大きくなりつつある。その背景として以下の5つを指摘できる。 ① 65歳までの雇用義務化により、役職定年後の期間が延び、処遇が以前より困難となっていること ② かつての50代と現在の50代では、体力・能力・意識が異なること ③ 誰でも役職者になれる時代ではなくなり、それなりの能力を有した者が役職者となっていること ④ バブル崩壊以後のスリム化の影響で、ミドル層が薄く、管理職適性のある者が少ないこと ⑤ 個性が重視されるなか、年齢による一律的な仕組みは社員の反発を受けやすいこと これらから、役職定年制は時代にそぐわないものになってきている。ただ、現実に役職者が過多であり、制度のメリットを捨てきれない企業も多いだろう。そのような企業の対応としては、「役職任期制」の方が適切ではないかと思う。 役職任期制では、管理職として有能と判断されれば定年までは務めることができる。もちろん、適正な審査が前提となるが、先のメリットを活かしつつ、デメリットを抑制するにはこちらの方が妥当と考えられる。なお、役職任期制については『役職任期制のメリットとデメリット』(コラム№86)も参照されたい。 過去記事は⇒ミニコラムもご参照ください。 お問い合わせは⇒お問い合わせフォームをご利用ください。 Tweet |
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