2025/1/12

外国人雇用の実態

 昨年末、厚生労働省から「令和5年外国人雇用実態調査」が公表された。この調査は、外国人労働者の雇用形態、労働時間、賃金等のほか、雇用する理由や課題など、外国人雇用の実態を明らかにするために、今回初めて実施されたものだ。

 昨今、小売店や飲食店、建設現場などで外国人労働者を目にする機会が多い。企業の外国人労働者雇用が増加していることの現れである。調査結果の中から、興味深いものをピックアップして、その実態を確認してみたい。

 まず、外国人労働者を雇用する理由の上位は以下の通りである。

「労働力不足の解消・緩和のため」64.8%
「日本人と同等またはそれ以上の活躍を期待して」56.8%
「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」18.5%
「日本人にはない知識、技術の活用を期待して」16.5%

 これは業種によって差があり、「労働力不足の解消・緩和のため」は、農業・林業(89.4%)、漁業(89.5%)などが高く、教育・学習支援業(4.8%)、金融業・保険業(21.4%)などは低い。一方で「事業所の国際化、多様性の向上を図るため」は、宿泊業・飲食サービス業(40.9%)、教育・学習支援業(34.2%)などが高く、建設業(5.9%)、農業・林業(8.1%)などは低い。現業系で労働力不足の解消目的が多いことがうかがえる。

 次に、外国人労働者の雇用に関する課題の上位は以下の通りだ。

「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」44.8%
「在留資格申請等の事務負担が面倒・煩雑」25.4%
「在留資格によっては在留期間の上限がある」22.2%
「文化、価値観、生活習慣等の違いによるトラブルがある」19.6%

 言葉の問題が他を引き離してのトップとなっているのは、予想通りである。一方で制度上の課題も多いことがわかる。政府は、専門的・技術的分野での外国人労働者は積極的に受け入れる方針を示している。それ以外の分野も、事実上、受け入れを増やす方向にある。制度の規制緩和は今後進む可能性が高い。

 外国人労働者の日本語能力(会話)は以下の通りとなっている。

「日常的なことなら短い会話に参加できる」25.3%
「幅広い話題について自由に会話できる」16.4%
「会話の場面に応じた言葉を使うことができる」13.3%
「日本語で会話はほとんどできない」2.7%

 これは在留資格によって違いがあり、技術・人文知識・国際業務や高度専門職、永住者は「幅広い話題について自由に会話できる」が30%前後で最多だが、特定技能、技能実習、留学は「日常的なことなら短い会話に参加できる」が40%前後で最多である。技能実習は「基本的な挨拶の会話はできる」も28.9%と多く、7割超が簡単な会話が中心となっていると推測される。そうだとすると、細かな仕事の指示や注意は難しいと思われる。また、質問や悩みの相談などに適切に応じるのも困難だろう。技能実習の問題の多さの要因の1つに、コミュニケーションの質の低さや量の不足があることが想像できる。

 実際、言葉に起因するトラブルは多いようだ。トラブルや困ったこととして外国人労働者が挙げているのは、「紹介会社(送出し機関含む)の費用が高かった」(19.6%)に次いで、「トラブルや困ったことをどこに相談すればよいかわからなかった」(16.0%)、「事前の説明以上に高い日本語能力を求められた」(13.6%)が挙げられている。

 問題解決に向けての1つの策は、会社と外国人労働者との介在役となる外国人を育成することだ。母国語で仕事の説明を受けられれば、トラブルは大きく減少するはずだ。そのためには、まず、その役割を担える人材を育成しなければならない。苦労はするかもしれないが、5年後10年後にはその苦労が報われるだろう。逆にその努力を惜しんでは、いつまで経っても外国人雇用によるトラブルが続く可能性が高い。        

 


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