人事情報データベースは、人事管理システムの1分野を構成するものだ。人事管理システムには、勤怠管理システムや給与管理システム、タレントマネジメントシステム、評価管理システムなどがあるが、これらが人事管理の特定分野のシステムであるのに対し、人事情報データベースは、これらのシステムから得た情報を統合して整理・分析するシステムである。
人事情報データベースが企業にどれくらい導入されているかといえば、人事院の「2023年民間企業の勤務条件制度等調査結果」によると、「導入済み」は62.1%と思いのほか多い。調査対象が50人以上の企業であり、小規模企業が対象外であることが要因の1つと考えられる。実際、規模別では、500人以上が91.8%、100人以上500人未満が67.5%、50人以上100人未満が44.8%と、規模の大きさによる導入割合の差は顕著である。
同調査でその活用目的を見ると、「業務の合理化・効率化」が92.4%で圧倒的なトップとなっており、以下、「人事配置の検討」43.5%、「人事戦略の策定・改定」39.1%、「労務費予算管理」37.7%と続く。これまで紙ベースで行っていた作業をデジタル化するなど、単純な合理化が目的となっており、“データベースの活用”までには至っていない実態がうかがえる。
人事情報データベースで管理する情報については、「氏名・住所等の情報」が98.8%と最も高く、次いで「給与情報(基本給、手当、賞与等)」93.0%、「勤怠情報(時間外労働、休暇・休業等)」83.3%となっている。
一方、「キャリア形成に関する希望(12.3%)」「人事部局・上司との面談記録(13.3%)」「健康状態に関する情報(20.2%)」などは低くなっている。「人事評価履歴(37.4%)」「研修受講履歴(28.9%)」も相対的に低い。現状、給与や勤怠に関するデータ整備が中心となっていることがうかがえる。
本来、人事情報データベースの活用には、以下のようなメリットがある。
①データを一元化および可視化することで、情報アクセスの迅速性と容易性が図られる
②人事情報の集中管理により、社員の採用・評価・昇進・異動など効率的な人材管理が行える
③従業員の評価データや成果を一元的に保存・追跡でき、客観的で透明性の高い評価が可能になる
④労働時間、給与履歴、労働契約内容などを正確に保管することで、労働コンプライアンスの向上ができる
⑤社員のスキルや経験をデータベース化することで、適材適所の人材運用が可能となる
⑥法律や人的資本経営等で開示を求められるデータを迅速に提示できる
⑦人事データを分析することによって組織・人事課題を見出し、将来の人事戦略や組織改善のための意思決定ができる
このように多様なメリットを期待できるわけだが、上記の調査結果を見る限り、大半の企業はこれらのメリットを引き出せてはいないと思われる。実際、人事管理システムの運用に精一杯で、データの活用までには手が回らないという企業は多いだろう。人事情報がデータベースとして活用されるのは、まだまだ先になりそうである。