2024/10/13

退職代行の利用動向

 退職代行は、社員に代わって退職の申し出を代行してくれるサービスだ。サービスの提供者は民間企業や弁護士だが、民間企業のほうが手軽で手数料も安いため、利用者は多いと思われる。ただし、弁護士と違って社員の代理人となることはできないので、社員の意思を会社に伝えるだけのサービスとなる。

 利用動向はどうかといえば、マイナビが10月3日に公表した「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」によると、直近1年間に転職した人で退職代行を利用した人は16.6%となっている。結構多いという印象ではないだろうか。

 利用した理由は、「退職を引き留められた(引き留められそうだ)」(40.7%)が最も多く、以下、「退職を言い出せる環境でない」(32.4%)、「退職を伝えた後トラブルになりそうだから」(23.7%)と続く。

 直近1年間で退職代行を利用した人のうち、74.2%が「今後も利用したい」と回答しており、満足度も高いようだ。

 とはいえ、どちらかといえば“訳あり”の場合に利用されるケースが多く、必然的にすんなり「わかりました」では済まない事態が予想される。このとき民間代行だと、社員に代わってトラブルを解決してくれるわけではない。間に仲介者を挟むことで、かえってトラブルが拡大する事態も想定される。もめることが予想されるのなら、最初から弁護士に頼んだ方が無難かもしれない。

 企業側への調査では、2024年1月~6月に退職代行サービスを利用して退職した人がいた企業は23.2%で、2021年の16.3%以降、年々増加傾向にあるとのことだ。5~6年前、代行サービスが出てきた当時は、単なるメッセンジャーに過ぎないサービスでは使い勝手が悪く普及しないのでは、と見る向きもあったがそうではないようだ。

 ただ、現時点では、代行サービスの”洗礼”を受けていない人事担当者や経営者のほうが多いだろう。それだけに、退職代行を受ける側のショックはまだまだ大きいと思われる。退職の意思表示という重大事項を、第三者を通じて示されることに対して、やりきれなさや怒りを覚える人も多いはずだ。「もう退職をするのだから、今後は一切関りを持ちたくない」との宣言にも受け止められる。退職願いは本人がするものという固定観念があることも、その気持ちを増幅させるだろう。

 とはいえ、今後、このサービスはさらに普及しそうである。これまで経験をしていない人事担当者も、この先、いつかは経験することになるだろう。そしていずれは、AIによる退職代行も開発されるかもしれない(既に開発中かも)。今はまだ生身の人間相手だが、そのうちAIロボットと退職手続きのやり取りをするのが普通になるわけである。そうなると、怒りすら覚えず淡々と手続きを進められそうではあるが。     

 


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