2024/3/10

残業時間と転職

 先月発表されたパーソルキャリア社の転職サービス「doda(デューダ)」の残業に関する調査を見ていて、面白いことに気づいた。通常、残業時間が長ければ長いほど転職を考えると思われるが、実態はそうでもないようだ。

 調査項目の1つに「残業時間の多さをきっかけに転職を考えるか」というのがあり、結果は55.5%が「考える(考える 18.9%、やや考える 36.6%)」と回答している。

 「まあ、そんなものだろう」と納得したのだが、問題は次の「転職を考える残業時間」で、結果は以下のようになっている。

残業がない18.0%30~40時間未満10.0%
5時間未満9.3%40~60時間未満12.9%
5~10時間未満9.0%60~80時間未満7.5%
10~20時間未満11.5%80~100時間未満4.0%
20~30時間未満10.5%100時間以上7.3%


 残業がある中では、「40~60時間未満(12.9%)」が一番多く、次いで「10~20時間未満(11.5%)」となっている。しかし、60時間未満はそれほど大きな差はない。どうも残業時間が長いほど転職を考えるということではないようだ。なお、60時間以上が比較的少ないのは、これほどの長時間労働が実際にはあまりないからと思われる。

 一番多かったのは「残業がない」で2割弱を占めている。残業がない会社であれば居心地がよく、転職など考えないと思いがちだが、必ずしもそうではないということだ。

 理由を考えてみると、1つは残業代を稼げないためと思われる。調査では「残業をする理由」を尋ねているが、「残業代を得るため」が33.4%で、「業務が終わらないため」に次いで2番目となっている。特に20代は47.8%と半数近くが残業代を理由にあげている。

 もう1つは、残業がない(できない)ことに対する物足りなさだろう。いわゆる“ゆるブラック企業”である。若い世代は仕事で成長できるかに大きな関心がある。友人が残業を通じて“鍛えられている”のを聞くと、楽だけど成長実感の乏しい自分の現状に焦りを感じてしまうのである。

 調査結果を見る限り、転職者が最も少なくなるような“最適残業時間”というのは存在しないようだ。言葉を換えると、どのような残業時間であっても転職を考える人はいるということである。残業がないのは素晴らしいという人もいれば、イヤだという人もいる。結局のところ、残業時間と転職の関係は社員個人の考え方による部分が多いといえる。    

 


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