前回に続いてエンゲージメントについて考えていきたい。今回は、エンゲージメントを高める施策を考える前提として、エンゲージメントを高める要素を体系的に整理してみよう。
要素は大きく、(1)会社の魅力、(2)仕事の魅力、(3)労働条件・人事制度、(4)職場環境、の4つに分けられる。それぞれ具体的に見ていこう。
(1)会社の魅力
会社の魅力の具体的な内容は次のものだ。
・事業内容
・理念・経営目標
・経営者の魅力
・組織風土
・社会や地域の評価
この中で「経営者の魅力」は中小企業で特に大きな要素となる。中小企業の経営者は、社員にとって身近な存在で接触機会も多く、また長期間にわたるのが一般的だからだ。他の項目への影響力も非常に大きい。そのような意味で、エンゲージメントに関して、特に中小企業で最も影響度の高いのは経営者といえる。「社会や地域の評価」というのは、知名度の高い企業、地域の老舗企業や優良企業で、その企業のメンバーであることに誇りを覚えられるものだ。
(2)仕事の魅力
・やりがい、意義
・適性(人との関わり、ものづくりの喜び、創造性の発揮、安定性等)
・面白さ、裁量の大きさ、達成感の大きさ
・希少性(誰にでもできることではない)
・役割、権限・責任が明確
これらはまず適材適所の配置が重要となる。その上で、上司のマネジメントの仕方が大きく影響する。単に仕事の指示をするだけでなく、必要性や背景を説明しているか、適切な権限移譲をしているか、成果をきちんと評価をしているか、などによって同じ業務であっても仕事の魅力度が違ってくる。
(3)労働条件・人事制度
・賃金
・労働時間(残業が少ない、柔軟性がある)、休日の多さ、休暇の取りやすさ
・評価制度(公平性、明確性)
・昇進・昇格の公平性
・能力開発制度
これらはエンゲージメント要素の中で、比較的企業が変えやすいものだ。
(4)職場環境
①ソフト面
・人間関係の良さ、風通しの良さ
・心理的安全性
・対等なメンバーとして認められること
②ハード面
・立地、オフィスの快適さ
・物理的安全性
・デジタル化の度合い
ソフト面は、(1)で挙げた「組織風土」や上司をはじめとする職場のメンバーの影響が大きい。ハード面は、一定のコストはかかるものの、エンゲージメント要素の中では変えやすい。
こうして見ると、エンゲージメントの要素は多岐にわたることがわかる。また、変えやすいもの、変えにくいものがある。
総じていえば、古いしきたりや考え方、トップダウンのマネジメントというのはエンゲージメントを低める。これを軸に、変えやすいものから変えていくのも一つの方法だろう。