日本経団連が6月6日に発表した会員企業の男性の育児休業取得率は、いい意味で衝撃的である。
経団連「男性の家事・育児」に関するアンケ―ト調査結果によると、2022年の男性の育児休業取得率は47.5%で、前年(29.3%)から大きく上昇したとのことだ。実に5割近い数値で、「何かの間違いでは?」というのが正直な感想である。
ちなみに、厚生労働省の「令和3年度雇用均等基本調査」では、2021年10月時点で男性の育児休業取得率は13.97%だった。調査年は異なる(といっても1年だが)もののかなりの違いがある。
背景として経団連が指摘しているのは、2022年4月に育休の個別周知・意向確認が義務化されたことや、同年10月からの産後パパ育休の創設、育休の分割取得が可能となったことなどだ。これ以外にも、2023年4月から、従業員1,000人超の企業に男性の育休取得率の公表が義務付けられるようになったことも影響しているだろう。
さらに言えば、こうしたことを背景に企業の意識・態度が大きく変化していることが挙げられると思う。要は男性に育休を取ってもらおうというムーブメントが起きているのだ。今春、賃上げが一大ブームとなったが、それと同じことが男性の育休取得にも起きているのである。「他社がやるからウチも」ということだが、これで望ましい方向に向かうのなら歓迎すべきだろう。
このように男性の育休取得が普及してきているとはいえ、企業規模によって温度差はある。経団連の調査なので回答企業は大企業(301人以上)が9割であり、この点が、厚労省調査の数値との違いに影響を及ぼしているはずだ。
経団連アンケートで規模別の取得率を見ると、「5日未満」は全体では9.3%のところ、5001人以上は1.9%しかないのに対し、301人~500人は21.4%、300人以下だと46.2%に上る。取らないよりはマシだが、中小企業では“なんちゃって育休”が半数近くを占める。
もっともこれは男性に限らず、女性も「5日未満」は1001人以上は皆無なのに対して、300人以下だと18.2%に達する。中小企業の育休の取りづらさが顕著に現れている。
男性の家事・育児を促進する上での課題としては、「家事・育児と仕事を両立する社員の代替要員の不足」が最も多い(83.5%)。要は人がいないということだ。
中小企業だと、その人以外は誰もその仕事のことを知らないというケースもある。1週間程度の不在ならば何とかなるが、1か月・半年となると、もうお手上げである。
不在に備えて代替要員を準備しておけばよいのだが、それはない。長期の不在にはならない、つまり休みを取らないことを前提としているからだ。
社員もその辺は心得ており、「取得しても、戻ってきたときに席はない」というのが(特に男性社員)の暗黙の了解となっている。今の時代、仮に育休の申請をしたとしても、会社・上司があからさまに拒否することないかもしれないが、「空気の読めないヤツ」とのレッテルを貼られて肩身の狭い思いをするよりは、取得をあきらめるのが賢明な選択ということだ。
そう考えると、まずは企業・社員の意識を変えること、そして、代替要員をつくることが重要となる。アンケートにおいても、男性の家事・育児を促進するため、今後、取り組む必要があることとして、「代替要員の確保」(36.0%)、「仕事を属人化させないための工夫」(31.3%)、「経営トップからのメッセージ発信」(29.9%)が上位に挙げられている。
男性の育休取得促進のムーブメントはじきに中小企業にも波及してくる。これに備えて、今から対応を考えておきたいものだ。