新卒者が入社して2週間が経過した。多少は落ち着いて会社、職場、仕事環境を見渡せるようになったのではないだろうか。そうすると、入社前にイメージしていたこととのギャップも明らかになってくるはずだ。中には期待以上という幸運な人もいるだろうが、期待以下という人も多いに違いない。
ディスコが3月28日に発表した、2022年に新卒入社した社員を対象とした「キャリア満足度調査」によれば、入社後にギャップを感じた人は、「とてもギャップがあった」11.7%、「ややギャップがあった」41.1%で5割を超えている。
ギャップと言っても、「思ったよりもフランクな雰囲気だった」とか、「意外と残業が少なかった」などのよいギャップもある。
一方、悪いギャップとしては、「前例重視」「しきたりが多い」「紙文化・ハンコ文化」などが挙げられており、いわゆる“昭和感”の強さに若者は衝撃を受けるようである。
ギャップというのは相対的なもので、もともとの期待値の高低によるところが大きい。たとえば、「残業が多い」と聞いて入社した場合と、「残業は少ない」と聞いて入社した場合とでは、同じ月30時間の残業であっても捉え方は異なってくる。前者であれば「意外と少ないな」と満足度の向上につながり、後者は「話が違うじゃないか」と不満を高める要因になりがちである。
近年、主に大企業を対象に、人材に関する情報開示の義務化が相次いでいる。労働施策総合推進法に基づく中途採用比率、女性活躍推進法に基づく女性管理職の割合や男女の賃金格差等、育児・介護休業法に基づく男性の育児休業取得率、企業内容等の開示に関する内閣府令に基づく有価証券報告書での人的資本に関する情報の開示などである。
開示する項目は特定されているものもあれば、選択、あるいは独自に設定できるものもある。後者であれば、企業としてはなるべく見栄えのよい指標を出したいところだが、現状、悪い数値であってもあえて開示するというやり方もある。たとえば、従業員満足度や若手社員の離職率、友人に自社で働くことを薦める職場推奨度などを、特によくなくても開示する企業もある。
こういった開示をすれば、入社後の負のギャップは少なくなるはずだ。正直に開示することで、透明性の高さやオープンな社風をアピールすることもできる。
もちろん、開示をするからには、今後の改善に向けての決意や具体的取り組みも併せて示したい。あえて、公表することで自らにプレッシャーをかける意味合いもあるのだ。
ディスコの調査では、勤務先企業への現在の満足度は平均72.3%で、入社決定時の79.5%から7.2ポイント減少している。満足度が下がるのは、入社前の期待と実際との負のギャップによるものが大きいはずだ。満足度が下がれば、退職リスクは高くなる。
上司との1on1面談やメンター制度などによりギャップ解消を目指すのもよいが、もともとのギャップを少なくする、つまり、会社の素顔をありのままに見せておくことも重要ではないかと思う。