2022/7/24

労働時間制度はどう変わるか

 現在の労働時間制度は、1947年に制定された労働基準法がベースとなっている。管理者の監督の下、労働者が同じ場所で決められた時間、作業をする工場労働を念頭につくられた制度だ。

 もちろん、社会経済情勢の変化に伴って種々の改定はなされているが、基本は75年前のものである。いろいろと使い勝手は悪いが、何とかだましだまし運用しているというのが実態ではないかと思う。ある意味、お上から降されたものを、ブツブツ不満を言いながらも工夫して使いこなすという日本人の特性があるからこそ維持できた制度ともいえる。

 それはともかく、この20年間、労働法制の中でも労働時間は特に注目を集めてきた。トピックで言えば、ホワイトカラーエグゼンプション、サービス残業、労働時間の上限規制、コロナ禍に伴うテレワークの労働時間管理などである。そして今後も注目を集めるに違いない。社会のデジタル化が急速に進むなかで労働時間制度は大きな変革を求められるからだ。

 国としても当然その認識はあるのだろう。7月15日、厚生労働省は「これからの労働時間制度に関する検討会」の報告書を公表した。その内容を確認し、労働時間制度がどう変わるかの方向性をつかんでみたい。

 報告書は、以下の5部構成となっている。
1.労働時間制度に関するこれまでの経緯と経済社会の変化
2.これからの労働時間制度に関する基本的な考え方
3.各労働時間制度の現状と課題
4.裁量労働制について
5.今後の課題

 2の「基本的な考え方」では、
1)どのような労働時間制度を採用するにしても、労働者の健康確保が確実に行われることを土台としていくこと
(2)労使双方の多様なニーズに応じた働き方を実現できるようにすること
(3)労使当事者が十分に協議した上で、その企業や職場、職務内容にふさわしい制度を選択、運用できるようにすること
 と、妥当というか、何とも当たり前の内容が示されている。ただ、「健康確保」が1番目に掲げられているのはやや意外である。仮に経団連などが同様のものを作成すれば、2のほうがトップに来たのではないかというのは考えすぎか。ちなみに検討会のメンバーは学者だけで、労使関係者は入っていない。

 3の「各労働時間制度の現状と課題」では、
(1)法定労働時間、時間外・休日労働等、(2)変形労働時間制、(3)フレックスタイム制、(4)事業場外みなし労働時間制、(5)裁量労働制、(6)高度プロフェッショナル制度、(7)適用除外(管理監督者等)、(8)年次有給休暇、(9)その他
 という項目を設け、それぞれの現状と課題を述べているのだが、別章を設けた裁量労働制を除き、「実態把握を行い、必要に応じ検討を進めていくことが求められる」といった程度で、具体的な内容はないのが残念だ。

 特に変形労働時間制や事業場外みなし労働時間制は、デジタル社会への対応に向けて、改革は必須と思うのだが。

 唯一、裁量労働制については対応の方向性について割と具体的に示している。デジタル社会には、まずは裁量労働で対応していこうというのが厚労省のスタンスのようである。どのような内容か、その詳細は別の機会に整理してみたい。            

 


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