2022/4/10

会社による副業の斡旋

会社による副業の斡旋

 社員が本業とは別の仕事に従事する副業が市民権を得てきた。副業を“認める”企業が徐々に増えている。わざわざ“認める”と強調したのは、一般的には副業は、社員の申し出に基づいて会社が承認するものであり、会社が積極的に働きかけるものではないからだ。

 もちろん例外はあり、一部IT企業などで副業を奨励するところもあるが、社員の申請→会社の承認、というスタイルに変わりはない。

 そのような中、さらに一歩進めて副業を斡旋するのが、大和ハウス工業が2022年4月から導入している「越境キャリア支援制度」である。

 同社HPによれば、「従業員の自律的な成長やキャリア形成を目的」に、「社内の経営資源に限定したキャリア制度だけではなく、社外のリソースも活用し、本業を継続しながら新たなチャレンジができる機会を提供することで、これまでは難しかった人脈の形成や自律的なキャリア形成、スキル・経験の獲得を支援するもの」である。

 具体的には、
・会社が副業先を斡旋する「副業(公募型)」
・従業員自らが副業先を見つけ、会社が許可をする「副業(申請型)」
・現在の所属のまま他部門の業務やプロジェクトに携わる「社内副業」
・グループ以外の他企業で自社以外の業務に携わる「出向」

 の4つのメニューを用意するとのことだ。

 このうち、「副業(公募型)」は、企業やNPOなどの副業先を会社が斡旋し、公募のうえでマッチングを行うもので、例として下記のものが示されている。
・技術職が大学・高校・専門学校で非常勤講師として授業を行う。
・会社が提携する自治体やNPOで、地域の社会課題の解決に取り組む。

 この制度の利点は、副業内容が会社のコントロール下にあるため、副業のデメリットとして懸念される働き過ぎや情報流出などのリスクを抑えられることだろう。

 副業を斡旋するというのは斬新な発想で目からうろこが落ちる思いである。多様な働き方を模索しているなか、今後、普及する可能性はある。

 さて、大和ハウスの制度は公募制なので、社員の意志が反映されるわけだが、「業務命令としての副業」を実施する企業もいずれは現われるかもしれない。かつての「追い出し部屋」のような事実上の戦力外通告で、いわば制度の悪用である。

 もっとも、副業を命じることができるかという問題はある。出向や配転命令は就業規則に基づいて原則可能となるが、さすがに副業命令を定めたものはないだろう。通常の業務命令の一環としてなし得るのか、それとも出向や配転と同様に就業規則上の根拠が求められるのか、そもそも副業を命じるのは労働契約の本旨からして無効であり認められないことになるのか、近いうちに議論が出てくるのではないかと思う。            

 


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