2021/12/26

働き方改革の取組2021

働き方改革

 一斉を風靡した「働き方改革」も旬を過ぎた感がある。

 2018年成立の働き方改革関連法を主導した内閣官房の「働き方改革実現推進室」も、岸田首相となって廃止された。少なくとも、政府が「働き方改革」という言葉を積極的に使うことは、今後なさそうである。

 それはともかく「働き方改革」の取り組みの実態はどうなっているのだろうか。厚生労働省の「労働経済動向調査(令和3年11月)」では、30人以上の企業に働き方改革の取組について調査を行なっている。テーマは、(1) 長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現への取組、(2)同一労働同一賃金など、雇用形態による待遇差の解消又は縮小に向けた取組、の2つに分けられているが、このうち、(1)の方を概観したい。

 まず、長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現に「取り組んでいる」事業所の割合は79%で約8割である。残りは、「改善の必要がない職場環境である(長時間労働は行われていない、多様で柔軟な働き方をするような性質の仕事ではないなど)」14%、「取り組んでいない」5%である。多くの企業が「働き方改革」に取り組んだことがうかがえるが、1000人以上91%に対し、30~99人は60%と、やはり規模により結構な差があるようだ。

 その取組内容を見ると、上位は次の5つである(複数回答)。

①「業務の効率化を進める」65%
②「時間外労働の事前申告制」59%
③「長時間労働抑制に関する数値目標の設定」49%
④「省力化投資(機械化・自動化、IT化)を行う」41%
⑤「テレワーク制度の導入・活用」32%

 「長時間労働の是正」が主要な取り組みとなっていることがわかる(「業務の効率化」や「省力化投資」も「長時間労働の是正」とセットで考えるべきものである)。一方で「多様な働き方」に関しては、「多様な正社員の導入・活用」は13%と、あまり進んでいない。「働き方改革」といえば「長時間労働の是正」およびそのための「業務効率化」というのが実態と言えそうだ。

 これらの項目の中で今後さらに増えそうなのが、④「省力化投資」である。実際、前年調査と比べて6ポイント上昇しているとのことで、ITの発達やサービスの普及を背景に、中小企業などにもさらに取り組みが進むと思われる。

 「働き方改革」というキャッチフレーズの将来は心許ないが、その中身は今後も必要である。コロナでそれどころではないとの言い分もあるだろうが、「働き方改革」の本質は、社員の意欲・能力を十分に発揮できる環境を作って生産性向上につなげることである。いっときのブームだとか、法律で決められたことだからとかではなく、企業として本来的に取り組むべきものであることを再認識したい。            

 


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