2021/12/12

パワハラ防止はトップ次第

パワハラはトップ次第

 近年、ハラスメントの多様化が見られるが、ハラスメントといえば、まずは「パワハラ」が思い浮かぶのではないだろうか。経団連が12月7日に発表した「職場のハラスメント防止に関するアンケート」結果によると、パワーハラスメントの相談件数が5年前と比べて増えている企業が多いとのことだ。

 具体的には、「増えた」44.0%、「変わらない」30.8%、「減った」16.3%である。ちなみにセクシュアルハラスメントの相談件数は、「増えた」11.5%、「変わらない」45.3%、「減った」28.8%と減少気味である。以下のアンケートは、ハラスメント全般に関するものだが、主にパワハラをイメージして差し支えないと思う。

 ハラスメント防止・対応の課題(3つ選択)として上位に挙げられたのは、①「コミュニケーション不足」63.8%、②「世代間ギャップ、価値観の違い」55.8%、③「ハラスメントへの理解不足(管理職)」45.3%である。

 気になったのは「ハラスメントへの理解不足(経営層)」が4.5%と非常に低かったことだ。回答者が経営者に忖度してのことかもしれないが、それにしても低すぎるように思う。本当に経営者はハラスメントに対する理解が足りているのだろうか。

 確かに、ハラスメントにまったく無関心な経営者いないだろうが、かといって非常に重視する経営者がどれだけいるか。暴力行為などの明らかなパワハラはともかく、多少の暴言はあっても、業績を上げてもらえれば許されると考える経営者は多いのでないか。

 何しろ経営者自身がその地位に至るまでに熾烈な競争を勝ち抜いてきている。ときには部下を強く叱咤したり、強引なリーダーシップを発揮したりしたこともあっただろう。単に“いい人”では業績は上げられないし、競争に勝ち残れない。少なくともハラスメントに近い行為は身に覚えがあるのではないか…と疑心暗鬼になってしまうのは、ハラスメント防止に対するトップの本気度があまり見えないからだ。

 ハラスメントの理解促進のための取組みで上位に挙げられているのは、「ハラスメントに関する集合研修の実施」が73.5%と最も多く、次いで「eラーニング実施」66.5%、「事案等の共有」61.8%である。

 4番目にようやく「経営トップからの定期的なメッセージ発信」46.8%が入る。上位とは数値にも差がある。研修やeラーニングの実施はもちろんよいのだが、それが真に効果を発揮するよう、まずはトップが本気である姿勢を示してほしいものだ。

パワハラはトップ次第

 ハラスメントの理解促進に効果的な取組み事例として、『「安全・(心と体の)健康、コンプライアンス、これらは業績よりも優先します。」という社長メッセージを全社員に発信』というのが示されている。これができるかどうかだ。「何を生ぬるいことを。業績の方が重要に決まっているだろう」とトップが思うような会社では、個々の社員の取り組み・努力だけではパワハラは無くならない、いや、減少もしないと認識すべきである。            

 


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