2021/7/11

高度プロフェッショナル制度の現状

高度プロフェッショナル制度
 
 2019年4月から導入されている高度プロフェッショナル制度の現状が厚生労働省から公表された(「高度プロフェッショナル制度に関する報告の状況」)。

 高プロ制度は、⾼度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で⼀定の年収要件を満たす労働者を対象として、労基法上の労働時間、休憩、休⽇及び深夜の割増賃⾦に関する規定を適⽤しない制度である。
 
 報告の要旨は以下の通りだ。

・2021年3月末時点で、導入企業数は20社(21事業場)、対象労働者数(合計)は552人
・内訳は多い順に、コンサルタント業務(441人)、ディーリング業務(79人)、証券アナリスト業務(27人)、研究開発業務(4人)、金融商品開発業務(1人)
・1か月当たりの健康管理時間の最長は、100H以上~200H未満が0事業場、200H
以上~300H未満が11事業場、300H以上~400H未満が6事業場
・1か月当たりの健康管理時間の平均は、100H以上~200H未満が8事業場、200H以上~300H未満が9事業場、300H以上~400H未満が0事業場
・選択的措置で多いのは、1年に1回以上の連続2週間の休日を与える9事業場、健康管理時間の上限措置5事業場
・健康・福祉確保措置で多いのは、心とからだの健康問題についての相談窓口の設置10事業場、医師による面接指導4事業場

 2021年3月の役員を除く雇用者数は5614万人なので、これに占める高プロ適用者の割合は0.00098%。およそ10万人に1人という稀少な存在である。特に金融商品開発業務の適用者は日本で(ということは世界で)ただ1人となる。
 
高度プロフェッショナル制度

 高プロ制度は元々、欧米のホワイトカラーエグゼンプションを見習った制度で、20年以上も前から何度か導入が議論されたが、そのたびに世間や労働側の反発で立ち消えとなり、2018年に対象者を絞ってようやく法制化されたものだ。施行前から適用者はほとんどいないことが予想されたが、案の定2年経過してもごくわずかという状況となった。
 
 労働時間については、最長では300H以上が6事業場あるものの、平均ではすべて300H未満となっている。仮に280時間/月とすると1日当たりは14時間ほどで、オフィス勤務であれば毎日終電のイメージである。

 これが許容されるかどうかは一概にはいえないが、霞ヶ関の役人にはこれくらい働いている人は多数いそうである。少なくとも、彼・彼女たちよりはやらされ感は低く、それなりの所得も保障されている(高プロの所得要件は年収1075万円以上)ので、本人の納得性は高いのではないかと思う。

 さて、使用者側はもちろん、制度をつくった国としても適用者をもっと増やしたいところだろう。ただ、現在と同じ対象範囲・要件であれば拡大は難しいのも事実だ。現在の導入企業や適用者にアンケートなりヒアリングを行うなどして、満足度や課題を整理したうえで、改善すべきところは改善し、対象範囲の拡大や要件の緩和を目指すのもよいと思う。せめて雇用者の千人に1人、つまり5万人くらいを目標にしてはいかがだろうか。        
 

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