2021/5/16

ハラスメントが起きやすい職場

ハラスメント
 4月30日に公表された厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書では、勤務先でハラスメントを経験した者とハラスメントを経験しなかった者との職場の特徴を労働者に調査している。これを見ると、ハラスメントが起きやすい職場の特徴が浮かび上がる。

 調査は、ハラスメントの態様を「パワーハラスメント」「セクシャルハラスメント」「顧客等からの著しい迷惑行為」の3つに分け、それぞれ、ハラスメント経験者と未経験者の回答割合を示している。以下、ハラスメント経験者の上位回答と、経験者・未経験者でギャップの大きい回答の上位を確認してみよう。

1.パワーハラスメント
(1)経験者の上位
①上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない 37.3%
②残業が多い/休暇を取りづらい 30.7%
③業績が低下している/低調である 28.6%
④従業員の年代に偏りがある 27.2%
⑤失敗が許されない/失敗への許容度が低い 23.7%

(2)経験者・未経験者でギャップの大きい上位
①上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない 22.2%
②残業が多い/休暇を取りづらい 17.3%
③失敗が許されない/失敗への許容度が低い 16.7%
③ハラスメント防止規定が制定されていない 16.7%
⑤業績が低下している/低調である 13.2%

2.セクシャルハラスメント
(1)経験者の上位
①上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない 34.4%
②従業員の年代に偏りがある 29.9%
③残業が多い/休暇を取りづらい 28.7%
④業績が低下している/低調である 28.4%
⑤女性管理職の比率が低い 25.2%

(2)経験者・未経験者でギャップの大きい上位
①ハラスメント防止規定が制定されていない 17.3%
②上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない 15.4%
③従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的に見られる 15.0%
④失敗が許されない/失敗への許容度が低い 13.5%
⑤残業が多い/休暇を取りづらい 12.4%

3.顧客等迷惑行為
(1)経験者の上位
①業績が低下している/低調である 30.5%
②残業が多い/休暇を取りづらい 29.9%
③従業員の年代に偏りがある 27.7%
④上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない 26.8%
⑤遵守しなければならない規則が多い/高い規律が求められる 24.2%

(2)経験者・未経験者でギャップの大きい上位
①残業が多い/休暇を取りづらい 14.5%
②業績が低下している/低調である 13.7%
③失敗が許されない/失敗への許容度が低い 12.9%
④遵守しなければならない規則が多い/高い規律が求められる 11.8%
⑤従業員の年代に偏りがある 9.4%

 このうち(1)と(2)の双方で挙げられているものは、特に重要な特徴といえるだろう。その観点から再度整理してみると以下のようなる。

1.パワハラの(1)(2)共通
・上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない
・残業が多い/休暇を取りづらい
・業績が低下している/低調である

2.セクハラの(1)(2)共通
・上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない
・残業が多い/休暇を取りづらい

3.顧客等迷惑行為の(1)(2)共通
・業績が低下している/低調である
・残業が多い/休暇を取りづらい
・従業員の年代に偏りがある
・遵守しなければならない規則が多い/高い規律が求められる

 このように見ると、

・「残業が多い/休暇を取りづらい」職場はいずれの態様においても特徴となる。
・パワハラ/セクハラが起きやすい職場は似ているが、顧客等迷惑行為を受けやすい職場の特徴は少し異なる。

 といったことが言えそうだ。

 また、セクハラに関しては、両者のギャップの上位に

・ハラスメント防止規定が制定されていない
・従業員間に冗談、おどかし、からかいが日常的に見られる
 
 が挙げられており、これらへの対応がセクハラ防止に有効であることが示唆される。防止規定を設けることそのものが、企業のハラスメント意識の高さの現れとなり、それが社員の意識向上につながると考えられる。      
 

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