2020/11/29

働き方の未来

 
 アフターコロナ、あるいはウィズコロナと言うべきかもしれないが、今後、働き方が大きく変わるのは間違いない。どのように変わるのか、また、変わる必要があるのかについては、先日経団連が発表した「。新成長戦略」が参考となる。

「。新成長戦略」は、2030年の日本が目指す未来像を実現するために、政府・企業のとるべき行動を「働き方の変革」、「地方創生」など5つの分野から提言したものだ。ちなみに、タイトルは誤植ではなく、『これまでの成長戦略の路線に一旦、終止符「。」を打ち、「新」しい戦略を示す意気込みを表している』とのことだ。

 「働き方の変革」の未来像として、揚げられているのは次の4つである。以下、企業の人事労務の観点からポイントを箇条書きでまとめてみる。

(1) 時間・空間にとらわれない柔軟な働き方への転換
(2) 多様で複線的なキャリア形成に向けた人材流動化
(3) 多様な人々の活躍促進
(4) 「産みやすく育てやすい社会」に向けた集中投資

(1) 時間・空間にとらわれない柔軟な働き方への転換
・働いた時間ではなく生み出す価値によって評価・処遇される。
・企業はリモートワークと出勤、オンラインとオフラインを必要に応じて組み合わせる。
・副業・兼業も奨励される。
・管理職には、従来の均質なチームが時間と空間を共有して働く場合とは異なり、多様性から価値を創造するマネジメントが求められる。
・現場での物理的な作業など、技術の進歩によりリモートワークが可能な仕事の範囲は広がっていく。
・工場労働を前提とした労働時間法制から、一人ひとりがそれぞれの方法で想像力・創造力を最大限発揮することを可能にする新たな労働時間法制が不可欠となる。

(2) 多様で複線的なキャリア形成に向けた人材流動化
・新卒一括採用や長期・終身雇用、年功序列制度は機能しなくなり、企業は採用や雇用、処遇のあり方を見直すことが必要になる。
・中途採用により、バックグラウンドや経験、技能の多様性を確保する。
・DXに伴い社内で新たに生まれる業務に人材を円滑に異動させるため、リスキリング(従業員の再教育)も必要となる。
・人材流動化が進められるよう、政府は労働者保護に資する解雇無効時の金銭救済制度を創設する必要がある。

(3) 多様な人々の活躍促進
・具体的な目標として、2030年までに役員に占める女性比率を30%以上にすることを目指す。
・外国人材が活躍できるよう、グローバル水準の住居、教育、医療などの居住環境をはじめ、社会全体での外国人材が暮らしやすく働きやすい環境の整備が必要となる。

(4) 「産みやすく育てやすい社会」に向けた集中投資
・企業は、時間や空間にとらわれない多様で柔軟な働き方を取り入れ、仕事と子育ての両立を推進する。
・産休や育休の取得によるキャリアの中断や遅れの回復が可能となるよう制度を見直す。
・男性が育休取得時に限らず育児を担うことが当然になるよう、職場の雰囲気を含めた環境の整備を進める。

 内容としては、コロナ以前から考えられていたものを、コロナを契機に一気に加速させるという感じだ。労働時間法制の見直しや金銭解雇制度の制定など、経団連の念願といえる政策もしっかり入っている。

 特にポイントとなるのは、「空間にとらわれない働き方」だろう。急遽導入したテレワークが機能せず、元に戻した企業も多い。それは、会社という物理的な空間で働くことを前提とした社会では当然の帰結ともいえる。人間、慣れ親しんだものを変えるのには抵抗があるからだ。元に戻そうとする力が働くのはやむを得ない。

 ただ、「空間にとらわれない働き方」が重要になっていくのは間違いない。多くの企業が様子見をしているなか、どう対応すればよいかを少しでも早く真剣に考える企業は、大きなアドバンテージが期待できそうだ。 “「空間にとらわれない働き方」を制する者は未来を制す”、大げさかもしれないが、そのくらいの気持ちで取り組むことが必要ではないだろうか。    
 

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