2020/10/5

定年後も同じ職場で働きたいシニアに

 定年後も働く意志のあるシニア社員の多くが、できれば同じ職場で働きたいと考えていることが、9月に発表されたディップ総合研究所の「定年後の就業意向・就業実態調査」結果 でわかった。

 同調査によると、定年後に働く意向を持つシニア社員(55~64歳)に、現在と同じ職場と異なる職場での就業、どちらを望むかを尋ねたところ、次の結果となった。

①現在の職場のみを希望する 23.5%
②現在の職場を希望するが、違う職場でも許容できる 40.2%
③こだわりはない 21.4%
④違う職場を希望するが、現在の職場でも許容できる 8.0%
⑤違う職場のみを希望する 7.0%

 ①②を「現在の職場を希望」、④⑤を「違う職場を希望」とすると、前者は63.7%、後者は15.0%となり、「現在の職場を希望」する人が圧倒的に多いことがわかる。

 「現在の職場を希望」する人を年齢別に見ると、55~59歳が61.8%、60~64歳が69.2%であり、高齢層ほど職場の変更を望まない傾向があるようだ。

 さて、この結果をどう見るか。「今の職場にしがみついているようで、ちょっと情けないな」と厳しい見方ができる一方で、「同じ職場で働き続けたい気持ちはよくわかる」と共感できる面もあると思う。

 実際、定年後に慣れたところで働きたいというのはごく自然の感情だ。ヒトには現状を変えたくないという現状維持バイアスがあるからだが、それで終わらせてはつまらない。もう少し踏み込んでみると、現在の職場を希望するのは大きく次の2つの理由からと考えられる。

①ポジティブ要因
 慣れた部署でこれまでの知見やノウハウを活かし、組織に貢献したいというもの。
②ネガティブ要因
 体力や気力も衰えているので、慣れた仕事でラクをしたいというもの(今さら新たなことに取り組むのは面倒、一から指導を受けるのはイヤだ、などもあり)。

 いずれもあると思うが、②のネガティブ要因が強い場合は、望まぬ職場に行ったときはもちろん、念願通り現在の職場で継続就業できたとしても、うまくいかない可能性は高い。現在の職場といっても、これまでと役割は異なるだろうし、新たに求められる仕事もあるだろう。そのような人材を受け入れる側の立場に立てば、軋轢が生じるのは容易に想像できる。

 シニア社員に必要なのは①のポジティブ要因を高めることだろう。そのために大切なのは次の2つだ。

 1つはこれまでの経験に自信を持つことだ(もちろん過信は禁物だが)。何十年も組織で働いてきたからには、何かの強みが必ずある。その中には、必ずしも現在の職場でなくても活かせるものがあるはずだ。たとえば、判断力というのは、永年の経験の積み重ねがものをいう。しかも50代、60代になっても低下することはないという。

 もう1つ大切なのは、柔軟性をなくさないことだ。ネガティブ要因が増えるのは、「もう歳なのだからこれができない、これはもう無理」と頭から決めてかかるからで、柔軟性の不足からくるものといえる。

 加齢とともに柔軟性が低下するのは仕方がないが、意識するのとしないのとでは大きく違う。一般にシニア層は頭が固いと思われており、実際、融通の利かない人が多いのは確かだろう。受け入れ側もシニア社員をそういう目で見ている。ただ、これはチャンスでもある。新たなことにも興味をもって取り組む。別に無理に目を輝かせる必要はない。少しでよいので、積極的な姿勢や楽しそうな素振りを見せる。若手に「この人は違うな」と思われればしめたものである。    
 

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