2020/9/13
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副業ガイドライン改定~その2 |
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今月、公表された厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」について、前回は労働時間管理のルールの原則を概観したが、今回は、より簡便な労働時間管理の方法となる「管理モデル」の中身を見てみよう。
「管理モデル」の枠組みは、副業・兼業の開始前に、A社(先契約)の法定外労働時間とB社(後契約)の労働時間(所定労働時間及び所定外労働時間)について、上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)の範囲内でそれぞれ上限を設定し、それぞれの範囲内で労働させるというものだ。 導入は、副業・兼業を行う労働者に対して先契約のA社が管理モデルによることを求め、これに労働者及び労働者を通じて後契約のB社が応じることによって行われる。 枠組みの部分で、後から契約するB社での労働時間が、法定外労働時間の扱いとなっている点に注目したい。つまり、時間外労働の割増賃金は、A社は通常通りに法定外労働時間分の支払いとなるが、B社は全労働時間について支払わなければならないことになる。 「管理モデル」により、副業・兼業の開始後は、他社の実労働時間を把握しなくても労働基準法を遵守することが可能になるということだが、いくつか疑問点が生じる。 1つ目は、A社の1日あるいは1週の労働時間が非常に短い場合である。このとき、B社の労働時間は法定労働時間に収まる可能性もあるが、それでもB社でのすべての労働時間について割増賃金の支払いが必要になるのかという点だ。 もし、必要ということであれば、B社としては余計な負担が生じることになり、A社から管理モデルの提案があっても断ることになるだろう(もちろん、その辺は納得して受諾することもあるだろうが)。そうするとこのモデルは、短時間労働を掛け持ちするようなケースではなく、正社員として働く人が、短時間の副業に就くというケースにマッチすると考えられる。 また、割増賃金率が5割以上となる月60時間超の時間外労働の算定をどうするかという問題もある。ガイドラインでは、A社での法定外労働時間の上限にB社での労働時間を通算するとしているが、そうなると両社で労働時間に関する情報のやり取りが必要となり、「他社の実労働時間を把握しなくても」という管理モデルのメリットを生かせなくなる。 さらに、上限規制の設定を単月80時間超としたとき、実際に80時間を超えた場合、複数月80時間以内を満たすためには他社の実労働時間を把握しなければならない。これも他社の情報が必要となる。 副業時の労働時間管理を簡便にするという趣旨はよいのだが、現時点ではいろいろと問題を抱えた制度のように思われる。原因の1つに、ガイドラインの文章だけでは、運用の仕方が今一つイメージできないということもある。これについては、おそらく、以前のガイドラインと同様にQ&Aが出ると思われるので、その公開を待ちたい。 にほんブログ村に参加しています。 |
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