2019/8/12

女性管理職割合についての雑感

 
 政府が”すべての女性が輝く社会”を唱えて5年が経とうとしている。管理職になったからといって必ずしも輝くわけでもないが、女性管理職の増加は、そのような社会に近づいていることの1つの指標になるはずだ。先般公表された厚生労働省の平成30年度雇用均等基本調査から、女性管理職の現状を確認してみよう。

 同調査によると、10人以上の企業で課長相当職以上の女性管理職(役員を含む)を有する企業割合は 56.3%(平成 29 年度 54.1%)である。

 役職別にみると、部長相当職ありの企業は 10.7%(同 10. 6%)、課長相当職ありは 19.0%(同 17. 7%)である。課長以上だと5割を超えているのに、部長・課長それぞれを足しても3割程度なのは、女性役員を有する企業が41.6%(同39.3%)あるからだ。部課長はいないのに、役員はいるというのもおかしな話だが、中小企業では、社長の奥さんや母親が役員に名を連ねるケースが多いことから、このような数字になっているのだろう。
 ただ、これでも部長・課長のいる割合は、平成 21 年度以降最も高い数値ということだ。女性の管理職登用は、とりあえず進んでいる。

 規模別では、当然ながら規模が大きくなるほど、女性管理職を有する企業割合が高くなり、たとえば、女性の部長相当職を有する企業は、5,000 人以上規模では74.4%、1,000~4,999 人規模では40.2%、300~999人規模では21.5%、100~299人では16.5%、30~99人12.6%、10~29人8.3%となっている。5,000 人以上の大企業でも、4社に1社は女性部長がいないということに、この国の女性登用の遅れをあらためて感じる。

 次に管理職に占める女性の割合を見ると、課長相当職以上(役員を含む)の管理職に占める女性の割合は 11.8%(平成29年度11.5%)である。また、それぞれの役職に占める女性の割合は、部長相当職では 6.7%(同 6.6%)、なお、課長相当職では 9.3%(同 9.3%)である。

 課長相当職以上の女性管理職割合を産業別にみると、医療,福祉(49.3%)が突出して高く、以下、宿泊業,飲食サービス業(23.1%)、生活関連サービス業,娯楽業(22.2%)、教育,学習支援業(21.9%)と続いている。低いのは、電気・ガス・熱供給・水道業(3.2%)、複合サービス業(7.3%)、製造業(7.5%)であり、業種による格差も大きいことがわかる。

 ちなみに、令和元年版「男女共同参画白書」に、管理的職業従事者に占める女性の割合についての国際比較があるが、米国40.7%、英国36.3%、フランス34.5%、ドイツ29.4%などに対して、日本は14.9%と、韓国の12.5%とともに極端に低い。

 このように、わが国企業の女性管理職の登用は発展途上にあるわけだが、模範となるべき国家公務員はさらに深刻のようだ。

 8月9日の日経新聞夕刊に、「霞ヶ関いまだ男性職場」という特集があり、2018年7月時点で女性の管理職登用は4.9%とのこと。省庁による格差もあり、高いのは消費者庁(16.1%)や文部科学省(11.7%)などで、低いのは国土交通省(1.5%)、警察庁(1.2%)など、民間と同じく“業種”による差が明らかだ。女性が少ない省庁には、女性が入りたがらず、悪循環に陥っている旨の指摘があった。
 
 政府は2020年までに女性管理職などの指導的地位に占める割合を30%にする目標を掲げているが、このままでは10年先の2030年でも無理そうである。先般、男性の育児休業を義務化するという話が出たように、いっそのこと女性管理職の義務化も検討してみてはいかがだろうか。
 

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