2019/8/5

オフィス環境改善の最新事例

 
 建物やオフィスが新しい、デザインが洒落ている、高層階からの眺めがよい、といった企業にお邪魔すると、ここで働く社員は気持ちいいだろうなと思う。もちろん、それだけではないが、物理的な環境が社員のモチベーションによい影響を与えるのは間違いない。

 とはいえ、オフィスの移転などはそう簡単にできるものではない。今いるオフィスを前提に、仕事環境の改善を考える必要があるだろう。その最新事例をいくつか紹介したい。

 日本企業では、部署ごとにシマを作り、通常の業務はその中の所定の席で行うのが一般的だが、それを根底から変えるのがフリーアドレスである。

 フリーアドレスは、「図書館の閲覧室のように、社員が個々に机を持たないオフィススタイル(ウィキペディア)」で、出社した社員は適宜自分の好きな席に座っていくのが原則である。狙いは、他部署の社員との交流の活発化で、これにより、アイデアを得たり、人脈がつくられ調整がスムースになるといった効果がある。また、仕事に集中したいときには、それに適した場所を見つけて就業することができる。
 副次効果として、ペーパーレス化が進むこともあげられる。印刷物の好きな社員(特に中高年)の抵抗もあって、ペーパーレス化はなかなか進まないものだが、自分の固定席がなくなればペーパーレス化せざるを得ない。
 こうしたことを背景に、フリーアドレス制には労働時間削減効果があるとの実証研究もある。

 フリーアドレスをもう1段階進めたのがアクティビティベース型ワークプレイス(ABW)で、これは、オフィスにさまざまな目的をもった就業スペースを設置するものである。

 2019年5月に導入したユニ・チャーム社の例を見てみよう。同社では、本社の25階フロアを「アジャイル特区」として開設し、フロア内に下記の4つのエリアを設けた。

(1)Concentration 「沈思黙考して戦略を深く思考する場」
・短時間で終わらせたい事務処理
・外部の音を抑えて沈思黙考
(2)Interact 「部門横断のPJ ・タスクフォースの場」
・機密性の高い会議室
・立ち姿勢での会議で活発な議論
(3)Communication 「コミュニケーションを促進する場」
・様々なタイプのオープンなスペース
・プレゼンテーションが行えるスペース
(4)Refresh & Relax  「インフォーマルな交流を促進する場」
・休憩時や昼食時にも利用が可能
・ミーティングやコミュニケーションの場にも
(同社の2019年6月13日付ニュース・リリースより)

 変化の激しい環境の中で、素早く正しい意思決定ができるように、「しっかり考え、自由な発想で仕事をスピーディに進めるための環境」を目的にしているとのことだ。

 ニュース・リリースには写真も添えられており、開放的な空間の中に、各スペースが設置されていることがわかる。中が外から見えず、ドアを開けてみないと誰がいるかわからないようでは、使いづらいはずだ。その辺りのしっかりとした配慮がうかがえる。
 
 「フリーアドレスやABWではハードルが高い、もっと簡単にオフィス環境を変えたい」との意見もあるだろう。そこで紹介したいのはBGM放送である。三井不動産が実験的に運用したところ、種々の効果が見られたとのことだ。

 同社では、今年の4月から、「USENの多彩なメニューを活用し、時間帯、音楽ジャンルやテンポ、無音時間帯等を様々に組み合わせたプログラムにより実証実験を行った結果、リラックス・気分転換・コミュニケーション活性で50%を超える高い割合で効果を感じていることが確認されました(同社の2019年7月9日付ニュース・リリースより)」ということである。

 確かに、終日、音楽を流しっぱなしなのはどうかと思うが、時間を決めて流すのであれば、仕事のメリハリがついてよいかもしれない。ちなみに同社では、「集中作業を妨げないよう配慮した絞った音量での実証実験」とのことで、ボリュームも抑えたほうがよさそうだ。

 他にも、犬や猫などのペットを社員として”就業”させたり、飲料だけでなくお菓子置き場を設けたりするなど、様々な取り組みがある。目的、予算、嗜好、意向を踏まえて考えてみてはいかがだろうか。
 

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